第16話「船の乗り降りはたいへん!~藤村が綴った震災後の熱海~」

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ページ番号1009138  更新日 令和2年8月20日

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あたみ歴史こぼれ話(本編)

「あたみ歴史こぼれ話」第16話の画像
「あたみ歴史こぼれ話」第16話(令和2年(2020年)8月号掲載)

※広報あたみの原本をご覧になりたい場合は、
以下のリンク先からご覧ください。

あたみ歴史こぼれ話―本編の後に

このコーナーでは、「あたみ歴史こぼれ話」で
掲載しきれなかったことを中心にご紹介します。
本編を読み進んだ後に、ご覧ください。

※このページで掲載されている画像は、閲覧のみ可能といたします。
 画像の保存、複製及び使用は禁止といたしますのでご遠慮ください。

【関東大震災で被災した熱海の状況は】

 大正12年(1923年)9月1日、午前11時58分、突然激しい地震が
 関東・東海地方を襲いました。震源地は相模灘北東部で、規模は
 マグニチュード7.9。熱海では揺れは数分間継続し、初震から約10分後には
 前後2回にわたって津波の襲来もありました。

 津波の高さは6.5メートルにも及び、逃げ場を求めて右往左往する人々や
 家屋を容赦なく飲み込みました。各所に亀裂が生じ、褐色の水が吹き出し、
 道路や橋・堤防などが壊れ、伊豆山では山崩れが起き、熱海町は
 死者・行方不明者あわせて92人という大きな犠牲を出しました。
 網代や多賀では湾内に停泊していた船舶の錨綱が切れ、押し寄せた
 波に乗って家屋を壊し、村の中央部に漂着しました。網代や宇佐美・
 伊東では、東京や小田原の紡績工場に多くの娘たちを出していたため、
 その安否を案じ、相談して仕立船をたてて迎えに出向いたそうです。

 『静岡県大正震災誌』による同年9月30日時点での罹災状況は、
 熱海市全域(熱海町、多賀村及び網代村の合計)で、死者78人、
 行方不明者22人、家屋の全半壊830戸、家屋の流出172戸となって
 います。(参考:『熱海市史』)

 震災が起きた時の状況については、大正13年に発行の『静岡県大正震災誌』
 (発行:静岡県)には次のように書かれています。
 「・・・午前十一時五十八分頃突如として強震來り、第一第二の震動は殆ど
  継続して六分時に及び、上下動に始まり水平線に終れり。熱海町は
  屋根瓦の墜落、家屋の倒壊、石塀の崩壊、山崩れ等の爲に、土煙随處に
  起りて一層凄愴を極め、老若男女悲鳴を擧げ爭うて難を避けんとし、
  其の混雑名状すべからず。初震より約十分にして前後二回津波の襲来あり、
  而も二丈の高きに及び、海濱に遭難せる者は再び山の手方面に逃れんとして、
  溺死を遂げたるもの少なからず。熱海町新濱・清水・和田の家屋は、
  全部海上に漂ひ、或は之に縋り或は樹木に取り着き、救助を求むるもの
  海陸相應じ、阿鼻叫喚の聲に滿つ、而も之を救はんとすれども小舟すらなく、
  一瞬にして親を失ひ、妻に別れ、家財を失へるもの幾何なるやを知らず、
  惨状筆舌の悉す處にあらず。又伊豆山は山崩の爲めに埋沒して其の七分を失ひ、
  多賀村・網代村にも亦被害激甚を極めたること熱海・伊東に異なることなし。」


【関東大震災後に熱海を潤した外国人労働者】

 上記のとおり、関東大震災により甚大な被害を受け、寂しくなった熱海でしたが、
 そのような状況の中、僅かでも支えになっていたのが、朝鮮からの労働者でした。
 既に丹那トンネルの工事も始まっていたこの時期、彼らは昼間はトンネル工事に
 従事していました。

 島崎藤村の短編小説『熱海土産』に、以下の様な描写があります。
 「私が前の晩のことを尋ねてみると、おかみさんは事もなげにほゝゑんだ。
  「(中略)今は何百人といふ鮮人が入り込んで居ますが、この辺に働いて
  居る鮮人はそれは温順(おとな)しいんですよ。震災の時なぞもよく働きました。
  私共の荷物なぞも、鮮人が来て運んで呉れました。」このおかみさんの話で、
  今のさびしい熱海が僅かに鮮人の工夫の群によって霑(うるほ)されて
  居ることを知つた。その人達は昼は山の方へ働きに行つて、夜になると町へ
  下つて来るといふ話をも聞いた。(中略)私は汽船での往復に、伊豆山から
  根府川あたりの海岸へかけて、高い崖の上の鉄道工事のために多勢働いて居る
  人影を望んで来たことをも思ひ出した。」

関東大震災で倒壊した家屋の画像
関東大震災で倒壊した家屋(提供:今井写真館)
関東大震災で倒壊した家屋の画像
関東大震災で倒壊した家屋(提供:今井写真館)

このページに関するお問い合わせ

教育委員会 生涯学習課 網代公民館 歴史資料管理室
〒413-8550 熱海市中央町1-1
電話:0557-48-7100ファクス:0557-48-7100
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