令和6年2月市議会定例会市長施政方針

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ページ番号1015137  更新日 令和6年5月14日

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写真 市長施政方針読み上げ

2月21日に行われました令和6年2月市議会定例会において、市長が施政方針を述べました。

1.はじめに

 令和6年2月市議会定例会が開催されるにあたり、私の市政運営についての所信を述べさせていただくとともに、令和6年度の施策の概要を申し上げ、議員各位、並びに市民の皆様のご理解とご協力をいただきますよう、お願い申し上げます。

伊豆山被災地域の復旧・復興を最優先としつつ 熱海躍進に向けて再始動する年

 昨年は、伊豆山土石流災害からの復旧・復興とコロナ禍等からの力強い経済再生を重要テーマに掲げ、取り組んでまいりました。令和6年度も引き続き、伊豆山被災地域の復旧・復興を最優先としつつ、「熱海2030ビジョン」の下、熱海躍進に向けて再始動を図るべく施策を展開してまいります。
 伊豆山土石流災害から約2年8カ月が経ちました。昨年9月に災害対策基本法第63条に基づく警戒区域が解除され、被災された方々の帰還が始まりました。被災された方々が現地に戻り生活を再開させるためには、河川・道路の整備、被災宅地の復旧など、これからも取り組むべき課題が多くありますが、被災者の皆様のお声をしっかりお聴きしながら伊豆山被災地域の復旧・復興に係る各種事業を着実に進めてまいります。
 また、昨年5月には、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが季節性インフルエンザと同等となり、行動制限がなくなったことから、まちの賑わいは戻りつつあります。地域経済は回復基調にある一方、物価高騰などの制約もある中で、持続可能な観光地熱海となるためには、更なる地域経済の活性化を図り、新たな施策を展開する必要があると考えています。今後は、平日のビジネス利用やインバウンドの誘客の促進など、熱海観光の新たな市場を開拓してまいります。
 同時に、中長期的な視点で熱海市が持続的に発展する仕組みづくりを目指した「熱海2030ビジョン」の実現にも取り組み、教育、福祉、環境などの分野に関する施策の充実を図り、市民満足度を高めるとともに、「熱海に住んで良かった」「熱海に移り住みたい」と思っていただけるまちづくりを推進してまいります。
 熱海市は今、新たな発展、躍進に向け転換期を迎えております。改めまして、市民、産業界、そして議員の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。

2.令和6年度の重点施策

(1) 伊豆山被災地域の復旧・復興を加速

 昨年、3月に国による新設砂防堰堤が完成、8月に静岡県による不安定土砂の撤去が完了したことから、9月1日に災害対策基本法第63条による警戒区域を解除いたしました。そして、旧警戒区域内の重要な生活道路である市道岸谷2号線の工事に先月着手いたしました。最重要課題である伊豆山被災地域の復旧・復興に向けた事業が本格的に始まり、これら事業を更に加速してまいります。
 2月20日現在、旧警戒区域内への帰還者は16世帯33人に留まっているところですが、被災された皆様の生活再建支援を進めながら、復旧・復興が早期になされるよう全力を挙げて取り組むとともに、必要な政策資源を投入してまいります。

1. 復興まちづくり計画の推進

 伊豆山被災地域の復旧・復興に関しましては、「伊豆山復興基本計画」、「伊豆山復興まちづくり計画」に基づき、道路・河川の整備の推進、昨年9月より運用開始した「被災宅地復旧事業補助金制度」の活用促進など、早期の実現に向け、着実に事業を推進してまいります。
 また、復興の進捗管理につきましては、昨年10月に設置された「熱海市伊豆山復興まちづくり推進懇話会」において意見を伺うなど、PDCAサイクルに基づき行ってまいります。
 被災地域を主体とする地域コミュニティの活動拠点として、また、各種防災資機材の備蓄施設として、(仮称)伊豆山地区コミュニティ防災センターの整備を行ってまいります。
 また、消防団活動拠点となる第4分団詰所の再建につきましては、地域防災力の要であり、早期完成に向け最優先に取り組んでまいります。

2.逢初川沿い市道再整備

 昨年9月に警戒区域が解除され、河川・道路事業を本格化するため、10月より被災者の方々と膝詰めで意見を伺う場として、被災地区を7ブロックに分けた地区別説明会を実施しており、工事については、1月より着手しているところです。
 逢初川流域の復旧・復興に向けて、静岡県が進める逢初川改修事業と連携しながら、被災地の中核となる市道再整備を進めてまいります。

3.被災者生活再建支援の継続

 被災者の皆様の生活再建に向けた支援につきましては、恒久住宅での生活再建ができるまでの間の住居支援、引越しに係る費用の支援、旧警戒区域内のご自宅へ戻られる際の上乗せ支援、及び住宅の新築、購入又は補修のための借入れに係る利子助成支援を継続してまいります。
 「伊豆山ささえ逢いセンター」につきましては、引き続き支援が必要な方に対する見守りや相談支援を行うほか、伊豆山の地域交流の拠点として「いずさんっち」を活用し、地元町内会や民生委員児童委員協議会など地域の皆様とともに、地域づくりを進めてまいります。
 また、伊豆山へ帰還された方や他の地域にて生活再建された方につきましても、被災者支援室をはじめとする福祉部局、各関係機関とも連携し、生活に関する不安や相談などへの対応を継続してまいります。

4.災害廃棄物の処理

 被災家屋の解体・撤去につきましては、令和6年度においても所有者の意向を第一に、公費による解体を進めてまいります。あわせて、関連する災害廃棄物等につきましても、処理が滞ることの無いよう行ってまいります。

(2)熱海躍進に向けて再始動

 私が、四期目の所信表明で掲げた「熱海2030ビジョン」は、本市の人口減少が続く状況下であっても、経済の持続的発展と豊かな市民の暮らしを実現する温泉観光地の全国モデルを熱海から作っていくことを目指したものです。
 しかし、令和2年2月から始まった新型コロナウイルス感染症の拡大、令和3年7月3日の伊豆山土石流災害の発生により、実現を目指した「熱海2030ビジョン」の取組みは優先順位を落とさざるを得ない状況になりました。
 その後、コロナ禍による行動制限はなくなり、また、伊豆山被災地域の河川及び道路工事にも着手し復旧・復興が着実に歩み始めたことから、令和6年度は、「熱海2030ビジョン」に掲げた「観光・経済の活性化」「教育・福祉の充実」「仕事・くらしの変革」を目指し、再始動する年といたします。

1.地域経済の更なる活性化

 令和2年4月に新型コロナウイルス感染症の感染拡大に対する緊急事態宣言が発出されてから、間もなく4年、この間8回の感染拡大と縮小を繰り返し、経済活動の変化や国民生活の行動変化が見られました。昨年5月に感染症法上の分類が5類とされてから、熱海市の地域経済の指標となる宿泊客数はコロナ禍前の9割ほどに回復しておりますが、未だ苦戦している状況であります。
 現在、観光業を取り巻く最も大きな課題は、旅行需要の平準化ができていないことであり、これにより繁忙期でのお客様の取りこぼしや、人手不足など雇用にも大きな影響を与えております。この課題に対する解決手段として、ビジネスシーンでの利用促進とインバウンド需要の取り込みの二つを軸に進めてまいります。
 昨年10月に株式会社JTBとの間に締結した「交流人口及び関係人口の拡大の推進に関する包括連携協定」に基づき、ビジネスシーンでの利用を促進してまいります。熱海へのアクセスの良さ、宿泊施設の利便性等を鑑みると、企業が行う「役員会議」、「開発合宿」、「チームビルディング研修」など、観光や慰安などの要素もある利用形態を考えております。
 特にコロナ禍をとおして、企業内のチームビルディングの必要性が高まっており、熱海の持つ「非日常性」、交通や宿泊施設などの「アクセシビリティ」を生かし、社員の「ウェルビーイング」につながる体験を提供できる街として、熱海をブランディングしてまいります。
 併せて、平日利用を喚起するプロモーションや、誘客が期待できる花火大会の開催を拡大し、受入環境整備として糸川遊歩道・初川遊歩道街路修景整備工事などにより街の魅力を更に磨き上げるとともに、Wi-Fi環境の充実などワーケーション施設等の利便性向上と利用促進に係るプロモーション経費等の支援や、人手不足解消に向けた観光施設就労促進事業等に取り組んでまいります。
 インバウンド誘客では、台湾を始めリピーターの多いアジア諸国からの誘客のため、海外観光展や旅行会社へのセールス活動を通じ、首都圏プラスアルファの目的地として認知拡大に努めるとともに、長期滞在が期待できる欧米豪からの誘客についても、静岡県観光協会をはじめ広域連携組織との協力により取り組んでまいります。
 持続的な熱海観光の推進、地域経済の活性化のためには、継続した街への投資が欠かせません。そのための安定した財源確保を目的として、使途を観光振興に限定した法定外目的税となる「宿泊税」を導入し、熱海に宿泊される観光交流客の皆さまのニーズを捉え、満足度の高い施策を展開したいと考えております。そして、その財源を効果的に活用するため、官民協働による観光まちづくり法人「熱海観光局」を設立し、更なる宿泊客の増加と観光消費額の拡大を目指した観光戦略の策定に取り組んでまいります。

2.教育・福祉の充実

 本市における出生数の減少は著しく、少子化が急速に進んでいます。このため、学校教育環境を新たに見直していく必要があると考えております。
 学校施設の統廃合については、「子どもにとって、好ましい教育環境を提供する」という視点に基づき、教育委員会が策定する「学校等施設の適正規模・適正配置計画」を考慮し、地域の皆様と十分に話し合いながら結論を見出していくものと認識しております。
 そのプロセスの一つとして、教育の質の向上のため、教育カリキュラムの編成等に柔軟性をもつ小中一貫教育の導入についての研究・検討を更に進めてまいります。
 また、老朽化が進み、施設の安全性に心配のある和田木保育園と、同じく老朽化の進行と入園児の減少により相対的に施設規模が過大となっている多賀幼稚園を集約していく方向で、南熱海地区の幼保施設の再編を目指してまいります。
 保護者が就労等により昼間家庭にいない小学校就学児童に対し、放課後の適切な遊び及び生活の場を与えることで健全な育成を図る放課後児童健全育成事業につきましては、令和6年度より新たに桃山小学校区に公設民営による放課後児童クラブを開設するにあたり、児童が安全・安心に過ごせるための保育室を桃山小学校内に整備してまいります。
 人口減少・少子高齢化、社会情勢の変化とともに市民の生活環境が変化する中、複雑化・複合化した生活課題に対応するため、令和5年度より開始した「重層的支援体制整備事業」につきましては、既存の相談支援機関などによる属性を問わない相談の受け止めや、熱海市社会福祉協議会による支援の役割分担を行い、複数の部署や関係機関が連携した包括的な支援体制の構築を引き続き進めてまいります。
 市民の皆様が健康で安心した生活を送るための感染症対策と致しまして、現在実施しておりますインフルエンザをはじめとする各予防接種の実施、及び接種費用の助成制度に加え、免疫力の低下により角膜炎や顔面神経麻痺、難聴などの合併症を引き起こす可能性がある帯状疱疹に対するワクチン接種費用の一部を助成してまいります。
 また、新型コロナウイルス感染症の予防接種につきましては、これまでの臨時接種から65歳以上の高齢者及び60歳以上の重症化リスクの高い方を対象とした定期接種に変更され、接種にかかる費用負担が生じることとなることから、ワクチン接種の費用についても一部助成してまいります。

3.仕事・くらしの変革

 人口減少や高齢化の進展により、町内会役員の担い手不足や会員の減少が著しく進行していく中、これまでの町内会活動の全般にわたる見直しの必要性が高まり、連合町内会が持つ単位町内会を束ねる機能強化や、相互の連携機能の充実がますます重要になってくることが予想されます。このような中、各地区町内会が主体的な活動を継続していくことができるよう、その中核的な調整組織である連合町内会事務局の持続的な人材の確保を目的として、行政からの要請事項等から生じる事務処理などの業務を委託化することに一定の財源を充ててまいります。
 現ごみ処理施設の老朽化が進み、おおむね今後10年の間に処理施設を更新しなければならない中、安定的かつ効率的な廃棄物処理を持続可能なものとすることを目的として、ごみ処理の広域化を進めてまいります。その第一歩として、広域化の枠組の決定及び建設候補地の選定を目的に、令和6年度は静岡県ごみ処理広域化マスタープランに示されている駿豆地区、熱海市、三島市、裾野市、長泉町、函南町の3市2町による広域化実現可能性調査を実施してまいります。
 令和4年12月に策定した地球温暖化対策実行計画を含む第三次熱海市環境基本計画に基づき、地球温暖化対策を図っているところでありますが、ゼロカーボンシティという目標達成のため、より具体的な分野別、取組内容別の達成目標を示した「脱炭素ロードマップ」を策定し、温暖化対策に向けた取組みをより一層推進してまいります。
 人口減少が続き、令和2年3月に閉校した旧網代小学校を利活用して、ふるさと創生事業に取り組みます。これはデジタル田園都市国家構想交付金を活用し、旧網代小学校施設を網代地区のハブ機能の拠点として、まちづくり会社を中心に地域住民と域外の人的資源との連携を図り、地域資源を活用した交流促進事業を展開することで、持続的な地域の活性化を図ろうとするものです。令和6年度は、域内外の交流の場として整備した交流スペース、テナントオフィス及びコワーキングスペースを活用して、新たな人の流れを創出し、コミュニティの活性化のため地域資源を活用した交流促進事業に取り組みます。
 また、網代地区を含む南熱海エリアでのエリアリノベーションまちづくり事業として、起業・創業と空き物件をマッチングするリノベーションスクールの開催等を行います。

3.各部門の主要施策

 続きまして、令和6年度の主要施策について、部門毎に説明申し上げます。

(1) 経営企画部門

 まず、経営企画部門についてです。
 公共資産の維持管理、更新等につきましては、「熱海市公共施設総合管理計画」を踏まえ、公共施設の長寿命化や老朽化対策のための改築・修繕等を行いながら、引き続き公共施設マネジメントを推進してまいります。
 また、熱海市所有の未利用・低利用の資産に関しましては、貴重な経営資源と捉え、本市の総合計画をはじめとする各種計画に沿った持続可能なまちづくりに繋がる利活用の提案を民間事業者から募集するなどし、民間投資による利活用を進めてまいります。
 さらに、近年、台風時に古木が折れる等の自然災害が増えていることから、予防伐採をはじめとして市有地の適切な管理に努めてまいります。
 次に、人事管理につきましては、職員は最大の経営資源であることから、市民の視点で自ら考え、熱意を持って業務を遂行し、意欲的に学び成長し続ける人材の育成を進めるとともに、採用方法の複線化を図り組織を支える多様で有為な人材の確保に引き続き努めてまいります。
 また、令和6年度は、伊豆山被災地域の復興事業が本格化することから、静岡県、静岡市、焼津市、藤枝市より土木技術職員の協力を仰ぎ、着実に復興を進めてまいります。職員派遣にご協力をいただく県及び各市に対しまして、改めて御礼を申し上げます。
 また、広報につきましては、近年、高齢者を含む多くの方々にSNSが日常のコミュニケーションツールとして浸透してきていることから、メールマガジンの配信とSNSの連携を強化し、防災情報をはじめとする多くの情報を適時・適切に伝えることで、市民の利便性向上を図ってまいります。
 自治体DXにつきましては、各種業務の電子申請サービスなどの行政手続のオンライン化に引き続き取り組むとともに、オープンデータ化の推進や公開型GISの活用など、行政情報の公開の拡充に取り組んでまいります。
 令和3年度に策定した「第五次熱海市総合計画」の前期基本計画の計画期間が、令和7年度で終了することから、令和6年度は、後期基本計画策定に向けた準備を進めてまいります。また、令和7年度末に計画期間が終了する「第二期熱海市まち・ひと・しごと創生総合戦略」につきましても、国・県の総合戦略の動向を確認しつつ、見直しに取り掛かってまいります。

(2) 市民生活部門

 次に、市民生活部門についてです。
 令和5年12月末時点の本市のマイナンバーカードの交付率は、約77%となり、市民の皆様への普及が進んでいる状況にあります。
 今後、マイナンバーカードと一体化した健康保険証の利用頻度を高めるための周知活動やこれを補完する資格確認書の発行、各種証明書のコンビニ交付の利用拡大に資する施策の展開などを通じ、カードの利用促進と窓口運営の効率化に取り組んでまいります。
 市民生活において必要不可欠な火葬場の利便性の向上と、施設の長寿命化に対応するため、霊柩自動車について本年10月からご遺族の乗車定員を2名増員し、最大4名乗車の車両に更新するほか、火葬炉の耐久性を高める改修等を行ってまいります。
 後期高齢者医療制度につきましては、県後期高齢者医療広域連合において2年ごとに保険料が改定され、被保険者数や一人当たり医療費の増加、子育てを全世代で支援するための出産育児支援金の仕組みの導入などを考慮して、令和6年度から引き上げられる見通しです。これに合わせて負担軽減の措置も講じられることから、市民の皆様のご理解をお願いします。
 持続的な観光振興策の財源となる宿泊税の円滑な導入を図るため、宿泊税導入の趣旨や使途などについて、納税義務者である宿泊者に対して周知していくとともに、特別徴収義務者として徴収等の事務負担が生じることとなる宿泊事業者に対しては、事務処理にかかるシステム改修等への補助金の交付を行ってまいります。あわせて、宿泊税導入に対するご理解とご協力のもと円滑な事務処理を行っていただけるよう、約360事業者を対象とした事務の詳細に関する説明会の開催など、十分な機会を設けてまいります。さらに、税務部門における賦課徴収の適正かつ円滑な実施のため、事務処理システムを構築してまいります。
 国の「デフレ完全脱却のための総合経済対策」の1つである、所得税及び個人市県民税所得割額から、一定額を減額する定額減税について、経済対策の趣旨に鑑み、適正かつ円滑な実施に努めてまいります。
 伊豆山の被災地域において、警戒区域として設定されていた区域及びその周辺における社会資本の復旧・復興の状況等を総合的に勘案し、旧警戒区域内に所在する土地家屋にかかる固定資産税及び都市計画税について、令和5年度に引き続き減免措置を講じてまいります。
 地方税統一QRコード等によるキャッシュレス納税の方法、いわゆるeLTAX(エルタックス)について、その利便性等について周知するとともに、一層の口座振替を促進するため、はがき型の依頼書により手続きの簡略化を図ってまいります。
 地域コミュニティにつきましては、81町内会への防犯灯電気料補助のみならず、 防犯灯のLED化から10年が経過している現在、器具等の耐用年数を踏まえ、LED防犯灯の更新や設置に係る費用の一部補助を実施し、地域の安全・安心の維持に尽力されている町内会への支援に努めてまいります。
 環境政策につきましては、「第三次熱海市環境基本計画」に基づき、ゼロカーボンシティの実現に向け、行政のみならず市民、事業者が取り組む新エネルギー機器の設置等に対する補助制度の充実を図ってまいります。
 エコ・プラント姫の沢は、平成11年に稼働して以降、施設の老朽化が進行する中、延命化基本計画に基づき、一部の機器更新など機能改善を図ってまいりました。今後、ごみ処理広域化の検討を含め、新清掃工場建設に向けた準備を進めるとともに、現有施設の維持保全、廃棄物処理の安定運営に努めてまいります。
 防災・危機管理につきましては、甚大なる被害を生じた伊豆山土石流災害、及び本年1月1日に発生した能登半島地震を教訓として、市民や関係機関等と連携を図りながら、引き続き地域防災力の向上と充実強化に努めてまいります。
 本年9月、静岡県及び伊東市との共催による総合防災訓練を行います。この訓練は広域受援、関係諸団体の参加を含めた県と市の連携が重要であり、地域の防災力向上のためのまたとない機会であることから、市民の皆様の参加を得て、効果的な訓練となるよう努めます。
 また、市民の皆様の地域の核である町内会や自主防災組織を通じた活動への支援を継続するとともに、防災講演会や防災出前講座などにより、行政と地域が意思疎通を図りながら、「自助」、「共助」の取組みを進めていただけるよう支援してまいります。
 市職員には、気象防災や災害対応に関する研修等を実施し、刻々と変化する状況を把握できるような能力を身につけ、行政の災害対応能力の向上を図ってまいります。
 さらに、地域安全コミュニティ活動の継続と充実は、交通安全や犯罪防止に寄与するものであります。今後も、安全で安心して暮らせる地域社会の実現に努めるとともに、不幸にも被害に遭われた方々の支援に取り組んでまいります。

(3) 観光経済部門

 次に、観光経済部門についてです。
 観光振興につきましては、春季・秋季の閑散期への誘客をはじめ、静岡県観光協会、美しい伊豆創造センターや市内観光関連団体等と連携したプロモーションに取り組んでまいります。また、三島市・函南町とともに取り組む「伊豆ファン倶楽部事業」では、マイナンバーカードを基盤としたポイント制度や、トークンを活用した地域産品販売事業などを通じ、伊豆地域の交流人口の拡大に向けた取り組みを実装させるとともに、伊豆地域全域へのサービス拡大を進めてまいります。
 熱海市の誘客の柱であるメディア・プロモーション事業では、昨年採用した「地域おこし協力隊」によるSNS等を活用した熱海の魅力発信事業を更に進めてまいります。
 2025大阪・関西万博に向けては、万博首長連合に加盟する全国の自治体と連携しながら、大阪観光局が取り組む日本観光のショーケース事業に関連し、大分県別府市や愛媛県松山市等とともに「温泉」を切り口にしたプロモーションに向けての準備を進めてまいります。また、ブルネイ・ダルサラーム国との交流においても万博の機会を捉え、相互の観光情報の紹介から、文化・経済交流、ブルネイハラル食など具体的な交流につながるよう引き続き取り組んでまいります。
 産業振興につきましては、熱海市チャレンジ応援センター「A-supo(エーサポ)」による個別相談を充実させるとともに、アフターコロナに対応した事業再構築や企業間連携などの機能を強化してまいります。
 また、空き家・空き店舗などの地域課題解決に向け、リノベーションまちづくり構想の具現化に取り組むとともに、魅力ある買い物環境づくりのため商店街が取り組む施設改修の支援、住宅店舗リフォームの補助、そしてテレワークの拡大により需要の高まっている移住・就業支援の補助などを行ってまいります。
 コロナ禍においては、事業者の事業活動を支援するために、経済対策貸付利子補給事業を継続するとともに、令和4年度・5年度と全ての事業者を対象として物価・エネルギー価格高騰へ対応するための助成を行ってまいりました。今後も適宜、状況に応じて産業界への支援策を講じてまいります。
 農林水産振興につきましては、農業の担い手支援による農業基盤の整備、適切な農道・林道の管理を行ってまいります。ナラ枯れ被害対策、また、有害鳥獣による被害防止のための柵などの資材購入に対する補助を継続するとともに、森林につきましては、令和元年度から令和4年度まで実施した森林所有者意向調査を基に、令和6年度からは間伐などを実施し森林整備を始めてまいります。その他、伊豆山土石流災害により被災した農地の復旧につきましては、土地所有者及び関係者と協議を行いながら進めてまいります。
 また、初島漁港の更なる機能強化を図るための工事を引き続き行うとともに、養殖漁業に対する支援など漁業基盤の整備に取り組んでまいります。

(4) 建設部門

 次に、建設部門についてです。
 人口減少下においても持続可能な都市経営を推進するための指針である立地適正化計画について更新作業を行ってまいります。また、同計画の目指す姿である「コンパクト+ネットワーク」について、その一翼を担う公共交通を取り巻く環境は、利用者の減少や運転士不足により厳しいものとなっていることから、こうした課題を多くの関係者とともに解決すべく本年6月に公表を予定しております「熱海市地域公共交通計画」に基づき、よりよい公共交通の実現に向けて取り組んでまいります。
 住宅施策につきましては、今年度公表を予定しております「熱海市住生活基本計画」に基づき、住宅セーフティネットの中心的役割を果たす公営住宅に関して、適正な規模や配置、効率的な維持管理等を定める「熱海市公営住宅長寿命化計画」の改定を行ってまいります。
 道路、橋梁などにつきましては、市民生活に身近な道路の利便性を高めるため、改良を積極的に進めるとともに、道路利用者の安全な通行を確保するため、定期的な見回り点検を実施しながら道路の補修工事を実施してまいります。また、「熱海市橋梁長寿命化修繕計画」に基づき、橋梁の定期点検や長寿命化工事を計画的に進めてまいります。
 公園等につきましては、梅園の園内を流れる初川や周辺に植栽された花木等の景観を維持できるように、将来的なリニューアルを想定し、園内における病害虫等による樹木枯れの被害拡大を防ぐとともに、樹勢回復のための樹木調査を実施し、引続き市民の憩いの場の提供や、観光資源としての魅力を高めてまいります。
 さくらの名所散策路については、昨年7月の落石に伴い応急的な安全対策を講じておりましたが、落石防護柵の設置を実施し、利用者の安全・安心を確保してまいります。

(5) 健康福祉部門

 次に、健康福祉部門についてです。
 人口減少や高齢化の進行、高齢者による単身世帯の増加などにより、暮らしの課題が複雑化・複合化している中、住み慣れた地域で共に支え合い誰もが安心して暮らせるよう、包括的な支援体制の構築や支え合いによる共助の地域づくりなど、「熱海市地域共生プラン」を実行し地域共生社会の実現を目指してまいります。
 高齢者福祉・介護につきましては、団塊の世代が75歳以上となる令和7年度を見据え、「第10次熱海市高齢者福祉計画」及び「第9期熱海市介護保険事業計画」に基づき、安定した介護サービスの提供と介護保険事業制度の円滑な実施を図るため、介護給付費の適正化や計画的な基盤整備、介護人材の確保などに努めてまいります。
 子育て支援につきましては、令和6年度に策定する「第3期子ども・子育て支援事業計画」について、令和5年度に実施した基礎調査を基に、子育てに関する各種事業の量の見込みと確保の内容等について策定作業を進めてまいります。
 また、多賀小学校内に設置されております放課後児童クラブ「多賀っ子クラブ」につきましては、利用児童の安全・安心及び快適性の向上等を図るため、トイレを洋式化いたします。
 障がい福祉につきましては、「第6期障がい者計画・第7期障がい福祉計画・第3期障がい児福祉計画」に基づき、障がいをお持ちの方やそのご家族が住み慣れた地域で安心して生活ができるように、障がい福祉サービスの更なる充実に努めてまいります。
 生活困窮者支援につきましては、高齢や傷病・家計急変等により困窮状態に陥った方々に対し社会福祉協議会などの関係機関とも連携し、生活再建・自立に向けた伴走型支援、セーフティネットを広げてまいります。
 また、国の経済支援策となる低所得世帯等に対する給付金等の迅速な支給による必要な支援を継続するとともに、状況に応じ生活保護制度による適切な保護に努めてまいります。
 健康づくりにつきましては、「健康づくり計画」に基づき疾病の早期発見・早期対応をはじめとした生活習慣病、及び介護予防対策を推進してまいります。
 また、健診受診率向上の取組みとして健康診断の受診勧奨の対象を拡大し、75歳以上の高齢者に対する「フレイル健診」の受診勧奨を行うとともに、医師・保健師等による個別相談を実施するなど生活習慣病の重症化予防、及び健康寿命の延伸につなげてまいります。

(6) 公営企業部門

 次に、公営企業部門についてです。
 令和6年度より、初島漁業集落排水事業に地方公営企業法を適用することにあわせ、事務を公営企業部に移管し、公営企業部門は4会計での事業運営となります。
 公営企業4会計につきましては、ライフラインを担う事業として、効率的かつ安定的な事業運営に努め、安全・安心で豊かな市民生活の向上に寄与してまいります。
 水道事業につきましては、昨年3月に見直した「水道事業基本計画」に基づき、老朽化した基幹施設の大規模更新事業を進めてまいります。初島地区海底送配水管布設替事業につきましては、令和4年度の事業着手から計画的に進めており、引き続き事業完成に向け工事を行ってまいります。築造から60年を迎えた来宮浄水場の再整備事業につきましては、令和6年度は詳細設計等を実施し、令和10年度の完成を目指してまいります。
 また、令和6年度から令和8年度までの段階的な料金改定により財源を確保し、老朽施設更新の加速化を図り、安全な水を安定して供給できるよう努めてまいります。
 水道広域化及び県営駿豆水道につきましては、将来を見据えた事業の在り方や受水費について、静岡県の作成した広域化推進プランにより関係者との協議を行うとともに、駿豆水道の今後の受水量などについて三島市、函南町と協議を進めてまいります。
 下水道事業につきましては、「ストックマネジメント計画」に基づき、老朽化した浄水管理センター設備や管路の更新工事を進めるとともに、適切な維持管理を行ってまいります。また、下水道使用料の改定につきましては、施設の老朽化による更新費用の増加、また昨今の物価上昇などから令和7年度の使用料値上げは避けられない状況でありますが、市内経済や市民生活への影響も踏まえ、引き続き経営努力を重ね、適正な改定率による使用料改定を進めてまいります。
 温泉事業につきましては、本市の基幹産業を支える重要資源でもあるため、料金改定により財源を確保し、源泉や送配湯管等の老朽施設更新の加速化を図り、安定して給湯できるよう努めてまいります。
 集落排水事業などへの地方公営企業法適用を求める、国からの要請に基づき、初島漁業集落排水事業に地方公営企業法を適用することに伴い、事務を公営企業部に移管いたします。なお、施設の供用開始後15年以上を経過しており、離島の海岸沿いに設置されている地域特性もあり、劣化も進んでいるため、施設の機能保全を計画的に行ってまいります。

(7) 消防部門

 次に、消防部門についてです。
 消防力の要は人材です。消防職員の更なる知識、技術の向上のため、外部派遣研修を含めた研修を積極的に行い、人材育成に努めてまいります。
 救急体制につきましては、本市の令和5年中における救急出動件数は3,777件を記録し、救急業務を開始した昭和40年以降過去最多で、人口に対して高い水準で推移する救急需要に対し、救急救命士の育成に努め、メディカルコントロール協議会との連携のもと、救急業務の高度化推進へ引き続き取り組んでまいります。
 火災予防対策につきましては、高齢者の安全確保を重点目標として、住宅用火災警報器の設置や取り替えの推進など住宅防火対策の強化を図るとともに、防火対象物への予防査察を強化し、違反是正の徹底を通じ、火災の予防に努めてまいります。
 また、中高層建築物をはじめとした災害に備え、屈折はしご付消防自動車を更新整備し、消防力の充実強化を図ってまいります。
 消防団機能の強化につきましては、消防団員の安全装備品である活動服を新基準に更新するとともに、下多賀地区を管轄する第7分団消防ポンプ自動車を更新整備してまいります。
 今後も、地域防災の要である消防団との連携強化を図り、常備・非常備消防が一体となり、地域の安全・安心の確保に努めてまいります。

(8) 教育文化部門

 次に、教育文化部門についてです。
 学校教育につきましては、各校に一定数存在する不登校児童・生徒への対応や増加傾向にある特別な支援を必要とする児童・生徒のため、引き続き特別支援教育の充実に努めてまいります。
 また、築後30年を経過する学校施設等が多数を占める中で、施設機能の回復と予防修繕の徹底が図れるよう、施設保全計画を見直してまいります。
 社会教育につきましては、市民の皆様に、より積極的に公民館を活用していただくために、予約システムやキャッシュレス決済などのDXを進め、利便性をいっそう向上させてまいります。
 起雲閣につきましては、音楽サロンの空調設備の改修などを行い、その魅力、来館満足度を向上させる取組みを進めてまいります。また、その他の文化施設についても、計画的なメンテナンスを実施できるよう努めてまいります。
 さらに、私人の所有する重要文化財等を保護、保存するとともに、その適切な活用方法について検討してまいります。
 市制施行80周年を記念し発行した「熱海温泉誌」につきましては、記載内容を更新する改訂版の発行に向けての準備を進めてまいります。
 図書館につきましては、篤志家のご寄附を用いて、老朽化が進んだ移動図書館車両が、これまでよりも利用し易く、かつ、満足度の高いものとなるよう整備を進めてまいります。
 また、若年層の読書率及び図書館利用率の向上を図るため、電子書籍の選書の充実を目指すとともに、幼児期からの読書活動の積み重ねが大切であることから、幼児教育施設への絵本等の貸出しを引き続き実施してまいります。
 さらに、司書が一定のテーマに沿って複数の本を紹介するブックトークを実施するとともに、図書館利用者自らが本の紹介を行うビブリオバトルの導入など、読書活動の推進に資する仕組みを検討してまいります。
 以上の施策をはじめ、「熱海市教育振興基本計画(兼教育大綱)」に位置付けた目標に向け、諸施策を着実に進めてまいります。

4.むすびに

 新型コロナウイルスの感染拡大から約4年、伊豆山土石流災害の発生から約2年8カ月が経ちました。これまで、市政におけるこの2つの大きな課題に全力で取り組んでまいりましたが、今ようやく、それぞれが新たな段階に入ってまいりました。
 今後は、伊豆山被災地域の復旧・復興を最優先としながら、熱海の躍進に向けて、「熱海2030ビジョン」を再始動してまいります。そして私は、この目標の実現に向け、全身全霊で取り組んでまいる所存です。
 議員各位、並びに市民の皆様におかれましては、特段のご理解とご協力をいただきますようお願い申し上げ、私の施政方針といたします。

令和6年2月21日

熱海市長  齊 藤  栄

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