令和5年2月市議会定例会市長施政方針

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ページ番号1013542  更新日 令和5年4月17日

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写真 市長施政方針読み上げ

2月21日に行われました令和5年2月市議会定例会において、市長が施政方針を述べました。

1.はじめに

 令和5年2月市議会定例会が開催されるにあたり、私の市政運営についての所信を述べさせていただくとともに、令和5年度の施策の概要を申し上げ、議員各位、並びに市民の皆様のご理解とご協力をいただきますよう、お願い申し上げます。

伊豆山土石流災害からの本格的な復旧・復興とコロナ禍等からの力強い経済再生

 伊豆山土石流災害からの復旧・復興、新型コロナウイルスへの対応、そして「熱海2030ビジョン」を更に前に進めることが、五期目に掲げたテーマです。
 私は、昨年9月に市民の皆様からの負託をいただき、引き続き五期目の市政運営を担わせていただくことになりました。平成18年9月の市長就任からの三期目までは、「財政再建」、「観光振興」、「住まうまち熱海づくり」を重要テーマとして施策を進めてまいりました。
 四期目では、中長期の視点で熱海市が持続的に発展する仕組みづくりを目指した「熱海2030ビジョン」を掲げ着手したところ、令和2年からの新型コロナウイルス感染症、翌年の伊豆山土石流災害への対応と激動の4年間でありました。
 伊豆山土石流災害では、先般、行方不明になられていた方のご遺体の一部が発見され、これにより、関連死を含めた災害死者は28名となりました。改めまして、ご遺族の皆様に心よりお悔やみ申し上げますとともに、亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。また、これまで懸命に捜索に取り組んでいただいた、多くの関係者の皆様に感謝を申し上げます。
 新型コロナウイルス感染症の影響により、平成27年から5年連続して300万人を超えていた宿泊客数が、東日本大震災時の236万人を大きく下回る153万人までに落ち込みました。
 このような状況に加え、ウクライナ情勢の長期化等の影響による原材料価格の上昇や供給面の制約など、予断を許さない社会経済状況も続いております。
 本市では、新型コロナウイルス感染症対策やウクライナ情勢の長期化、円安の進行による物価高騰への対応などについて、令和4年度補正予算を編成し対応してまいりましたが、今後もこうした感染症対策や物価高騰への対応をはじめ、山積する行政課題を着実にこなしていくため、将来を見据えた持続可能な財政運営に努めていかなければなりません。
 これらを踏まえ、令和5年度は、伊豆山土石流災害からの復旧・復興に最優先で取り組むとともに、コロナ禍からの脱却等を図る施策を講じ、更に、熱海市の持続的な発展が図られるよう「熱海2030ビジョン」の実現に向けて取り組んでまいります。
 熱海市は引き続き、大変厳しい状況にありますが、試練を乗り越え、熱海の新たな発展に向け、全力で市政に取り組んでまいる所存です。改めまして、市民、産業界、そして議員の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。

2.令和5年度の重点施策

(1) 伊豆山土石流災害からの復旧・復興

 最優先課題である伊豆山土石流災害からの復旧・復興に向けて、先般、策定した復興計画を踏まえ、詳細な事業について実行に移してまいります。
 災害対策基本法第63条による警戒区域の解除については、新設砂防堰堤の建設や逢初川源頭部の不安定土砂の撤去が完了し、逢初川流域の安全が確保されることが大前提です。これを踏まえ、今年の夏の終りまでに解除したいと考えております。
 また、一日も早く、一人でも多くの被災者の皆様に、住み慣れた伊豆山の地へ戻っていただけるよう、全力を挙げて、被災地域の社会基盤整備を進めるとともに、生活再建支援策を講じてまいります。

1. 被災者生活再建支援策の実施

 被災者の皆様が避難生活を送られている応急住宅につきましては、災害救助法による支援終了後も、恒久住宅での生活再建へ進んでいただける状況になるまでの間、現在の住居支援を継続してまいります。
 また、生活再建に伴う応急住宅から恒久住宅への引越しに係る費用について支援を行ってまいります。さらに、警戒区域内において自己所有の自宅へ戻られる場合の上乗せ支援、及び新築、購入又は補修のために融資を受けた際の利子の一部助成を行ってまいります。
 併せて、被災エリアの健全な復興と良好な住環境整備のため、家屋を解体する費用の一部助成を行ってまいります。

2.被災者見守り・相談支援

 令和3年10月に開設した「熱海市伊豆山ささえ逢いセンター」では、被災者の皆様が一日でも早く安心した日常生活を取り戻せるよう、生活支援相談員による訪問活動を中心とした見守りや相談支援を行ってまいりました。今後、警戒区域の解除により被災者の皆様の生活再建が現実的となってくる中で、伊豆山地域に戻られる方、新たな場所での生活再建をされる方などそれぞれの状況や思いなどを丁寧に伺いながら、被災者の皆様に寄り添った支援を引き続き行ってまいります。
 また、被災者の皆様が地域に安心して戻っていただけるよう、地元町内会や民生委員児童委員協議会など、関係機関の皆様とも連携し、地域づくりを進めてまいります。

3.復興まちづくり計画の実行

 昨年策定いたしました「伊豆山復興基本計画」、「伊豆山復興まちづくり計画」について着実に実行に移し、伊豆山地区の復旧・復興を速やかに行ってまいります。
 現在も避難生活を余儀なくされている皆様が、一日でも早く生活再建ができるよう、地域における安全対策、道路やライフラインの整備を関係機関と協力しながら進めるとともに、これからの伊豆山に必要な公共施設について、地域の皆様のご意見を伺いながら整備してまいります。
 また、伊豆山復興の進捗管理につきましては、熱海市伊豆山復興推進本部が地域の皆様と連携・協力体制を取りながら、PDCAサイクルに基づき行ってまいります。

4.逢初川沿い市道再整備

 逢初川流域の復旧・復興に向けて、逢初川沿い市道の再整備を、静岡県が進める逢初川改修事業と連携しながら実施し、被災地の中核となる道路整備を進めてまいります。

5.災害廃棄物の処理

 罹災証明書で半壊以上と判定された被災家屋の解体・撤去につきましては、二次被害の防止や生活環境の保全のため、所有者からの申請に基づき、公費解体を進めております。令和5年度も所有者の心情に寄り添いながら引き続き被災家屋の公費解体を進めてまいります。
 また、被災家屋の公費解体などにより被災地から笹尻仮置場に集積された災害廃棄物等につきましても、引き続き周辺の環境に影響が出ないよう適切に管理を行い、金属や木材など素材ごとに分別しリサイクルするなど、適正な処分を進めてまいります。

6.災害派遣職員の確保

 被災地域の復旧・復興を本格的に進めていくため、静岡県をはじめ、焼津市、御殿場市、伊東市から1名ずつ、合わせて4名の技術職員を、また、静岡市、沼津市から1名ずつ、合わせて2名の事務職員を派遣していただき、道路の工事設計業務、用地関係業務など復興まちづくりに関する各種事業に従事していただく予定です。
 職員を派遣いただく静岡県及び各市に対しましては、改めて御礼を申し上げます。

7.組織体制の強化と再発防止への取り組み

 伊豆山復興計画が策定され、計画が実行段階に移っていることを踏まえ、一刻も早く被災された皆様の帰還を実現すべく復旧・復興事業の進捗を加速していくこと、そして被災された皆様の生活再建への支援にきめ細かく対応していくことの2点を最優先事項と捉えています。このため、観光建設部に伊豆山復興計画を推進し復旧・復興に係る建設、整備事業の司令塔となる部署を設置するとともに、健康福祉部に生活再建に係る支援の総合窓口となる部署を設置して、対応を強化してまいります。
 そして、伊豆山土石流災害の教訓を踏まえ、行政対応の改善を図り、再発防止に努めてまいります。
 具体的には、違法な土砂の搬入や森林伐採等の土地の改変行為をいち早く察知し、こうした悪質な行為者への迅速な対応を行うことなどを目的として、監視カメラの設置や人工衛星を活用した地表面の変化の観測による監視体制を強化してまいります。
 また、現場における様々な技術的な事案について、専門的な知見から助言が得られる技術系専門家による相談体制の導入を行うとともに、職員の法務に関する知識・能力の底上げにつながる研修の強化にも取り組んでまいります。

(2)コロナ禍及び物価高騰における対策

 新型コロナウイルス感染症が確認されてから3年が経過していますが、ウイルスは変異を繰り返し、その度に感染者は増加しています。そのような中、国では、現在のオミクロン株は従来株と比べて重症化率が低い傾向にあったことや、オミクロン対応のワクチン接種が始まったことなどを受け、同感染症を5月から感染症法上の5類へ移行する方針を示しております。しかしながら、本市としては引き続き市民一人ひとりが安心した生活を送るための支援を行うとともに、安定した市内経済を取り戻せるよう対策を講じてまいります。

1.新型コロナウイルス予防対策

 新型コロナウイルス感染症には、基本的な感染予防対策の徹底とワクチン接種が有効であると考えております。そのためにも、希望する市民が速やかにワクチン接種を受けられる体制を引き続き維持してまいります。

2.コロナ禍・物価高騰からの経済再生

 令和4年3月に新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置が終了し、令和4年度は3年ぶりに「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」に基づく「飲食」「移動」の行動制限がありませんでした。これまで観光需要喚起策として実施されている県民割や全国旅行支援により、熱海市の宿泊客数も回復傾向にあり、熱海海上花火大会などイベント開催時には、コロナ禍前を超える来遊客により一時的にオーバーツーリズムの状況も見られます。しかしながら、全国旅行支援等が実施されている中でも、令和4年度の宿泊客数はコロナ禍前の水準の7割から8割程度に留まっており、依然、大変厳しい状況が続いております。
 併せて、ロシアによるウクライナ侵攻を一因とする世界的な原油・穀物等の不足や、日米の金融政策の違いによる急激な円安基調の進行などの影響により、電力・燃料等のエネルギー、そして食料や各種原材料など輸入に依存する製品を中心として価格が高騰しております。これにより、宿泊業のみならず多くの産業で収益率が悪化していると考えられることから、市内経済の縮小につながるのではないかという危機感を持っております。
 令和5年度におきましては、コロナ禍前の水準に向けた宿泊客数の回復と旅行消費額の増加を目指し、市内への経済波及効果を高めるための施策を進めてまいります。
 宿泊客数を回復させるため、引き続き、旅行需要の平準化に資する、ビジネスシーンでの利用を促す企業向けのプロモーションに取り組むとともに、当該ターゲットの受入環境整備として令和2年度から取り組んできたワーケーション施設整備は、ハード面の整備のみならず、研修プログラムやアクティビティ開発などのソフト整備を進め、観光地としての更なる魅力拡大を目指してまいります。
 また、観光庁による「地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化事業」などの補助事業を積極的に活用し、宿泊施設や交通事業者等の高付加価値化事業の推進を図ることで、宿泊需要の平準化と観光消費の拡大を目指してまいります。
 今後も、新型コロナウイルス感染症の影響には柔軟に対応しつつ、主要市場である首都圏に加え、中京・関西圏及び水際対策が緩和されたインバウンド旅行者等の新たな市場開拓のためのプロモーションに取り組むとともに、昨年度に引き続き、熱海海上花火大会開催への支援拡大など、イベント等の実施主体の皆様と協力しながら、効果的な誘客に取り組んでまいります。
 さらに、物価高騰の影響による給食費にかかる食材料費等の急激な値上がりに対応するため、給食の質を維持すると共に、保護者の皆様の負担軽減を図ることを目的として、市内小中学校及び私立を含む保育施設において、日々提供している給食の食材料費のうち物価高騰分について補助してまいります。

(3)熱海2030ビジョンの実現に向けた重点施策

 伊豆山土石流災害からの復旧・復興、コロナ禍及び物価高騰における対策は喫緊の課題でありますが、「熱海2030ビジョン」も同時に進め、中長期の視点で熱海市が持続的に発展していくための施策の実現に取り組んでまいります。

1.観光・経済の活性化

 コロナ禍も3年を経過し、世界的にウィズコロナに向けた観光の在り方が模索されています。国内においてはマイクロツーリズムの意識が浸透し、世界的には、昨年、国際機関が発表した「観光魅力度ランキング」で日本が初の1位となり、日本観光のポテンシャルの高さが評価されるなど、熱海市にとって外的要因はプラスに動き出したように感じています。こうした環境変化に対応していくため、熱海型DMO「熱海観光局」を中心とした「オール熱海」による官民協働の体制づくりを進め、サステイナブルツーリズムや観光DXなどの取組を進めてまいります。そして、将来にわたり、持続的に観光客を受け入れられる魅力的な街をつくっていくには、安定的な観光財源の確保が不可欠であります。関係する皆様のご協力をいただけるよう丁寧に説明を尽くし、ご理解を得られるよう取り組んでまいります。
 糸川遊歩道につきましては、多くの観光客が訪れ散策を楽しめる中心的なエリアになっていることから、年間を通して更なる昼夜の賑わい創出の契機となるよう修景整備を進めてまいります。
 また、初川遊歩道につきましては、熱海芸妓見番が風情あるスポットであることから、視点場や照明の整備、周辺の修景整備を行い、魅力の向上を図ってまいります。

2.教育・福祉の充実

 ここ数年、年間出生数が100人を下回る状況が続いており、本市においても少子化が急速に進行している中、現状においても、また、今後においても、児童生徒数は減少していくことが推測されます。このような中、教育環境を整え、教育の質の向上を図るため、教育カリキュラムの編成及び実施に柔軟性をもって対応することが可能な、小中一貫教育の導入について、先進地への視察等による調査研究を進め、実現に向けた準備を行ってまいります。
 社会構造の変化や新型コロナウイルスの影響などにより生活課題が複雑化・複合化する中、令和5年度から「重層的支援体制整備事業」を開始します。様々な相談支援機関が連携し、市民の皆様の身近な相談機関において属性や分野に関わらず相談を受け止め、事業の中核機関となる熱海市社会福祉協議会が関係機関の役割分担などの調整を行い、包括的な支援体制を構築してまいります。
 また、これまで必要な支援が届いていなかった方に対する継続的なかかわりや、地域づくりや社会資源の活用などを一体的に進め、地域共生社会の実現を目指してまいります。

3.仕事・くらしの変革

 人口減少や少子高齢化などによる社会環境の変化を背景に、町内会やNPO団体などの市民が主体的に行動する団体の多くが、会員の減少や後継者不足等により、これまでの活動の継続や、団体自体の継続に懸念を抱いております。また、コロナ禍や災害など非常時における困難を乗り切るためには、地域による支え合いが必要となります。
 これまで、地域団体による地域課題の解決や地域力の向上に資するため、「地域コミュニティ活動推進事業補助金」や「協働の地域づくり交付金」を創設し、支援を行ってまいりましたが、引き続き、令和5年度も継続してまいります。
 また、行政や市民、地域団体が、それぞれの情報や問題を共有しながら、コミュニティ活動の連携を強化し、蓄積された経験や特色を活かすことで、協働による地域づくりを推進してまいります。
 本市は、令和4年9月市議会定例会での所信表明において、2050年までに二酸化炭素排出量の実質ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ宣言」をいたしました。
 この2050年ゼロカーボンシティの実現に向け、市庁舎等の照明をLED化し、率先して二酸化炭素の排出削減に取り組んでいくとともに、市民の脱炭素型ライフスタイルへの転換を図るべく、ZEH(ネットゼロエネルギーハウス)、エネルギー効率に優れる次世代自動車、及び省エネルギー性能の高い設備・機器等の普及拡大を推進するための新たな補助制度を創設し、二酸化炭素排出量削減に向けた取組みを推進してまいります。
 網代地区においては、人口減少や少子高齢化などを要因に、産業やコミュニティなど、様々な場面で担い手が減少し、まちの活力が失われつつあります。そこで、旧網代小学校を、オフィス機能や集会機能を備えた「人と人・人と事業・人と資産をつなぐハブ機能を持つ拠点」として整備します。テナントオフィスやワーケーション施設として、また、地域資源を活かした交流促進事業等を展開する場として活用し、地域外からも人を呼び込むとともに、まちづくり活動の拠点としても活用する計画です。
 この拠点を中心に、地域内外の人と事業と資産が結びつくことにより、新しい産業の創出や起業・創業、移住定住を促し、網代地区に活力を取り戻すとともに、持続可能なまちづくりを進めてまいります。

3.各部門の主要施策

 続きまして、令和5年度の主要施策について、部門ごとに説明申し上げます。

(1) 経営企画部門

 まず、経営企画部門についてです。
 公共資産の維持管理、更新等につきましては、公共施設全体の最適化と持続可能な財政運営の両立の観点から、「熱海市公共施設総合管理計画」等に基づき、長寿命化対策や老朽化が進んだ公共施設の改築・修繕等を行うなど、着実に公共施設マネジメントを推進してまいります。
 また、熱海市所有の未利用・低利用の資産に関しましては、小嵐中学校跡地をはじめ、地域経済の生産性向上や地域活性化への貢献が見込まれる資産について、民間投資による利活用を進めてまいります。
 さらに、近年、局地的な豪雨による自然災害が増えていることから、市有地の適切な管理に努めてまいります。
職員は最大の経営資源であることから、市民目線で自ら考え、判断し、チャレンジ意欲を持って行動できる人材の育成を進めるとともに、採用の複線化を図りながら、意欲や能力の高い職員の確保を目指した採用を行ってまいります。
 また、職員の定年が段階的に引き上げられることから、多様な働き方への対応とともに、高齢期の職員が培ってきた知識、経験を発揮できるような環境整備に努めてまいります。
 情報システムにつきましては、各種業務の電子申請サービスなどの行政手続のオンライン化に引き続き取り組むとともに、課題でありましたオープンデータ化の推進や公開型GISの構築、活用など、行政情報の公開に取り組んでまいります。
 広報につきましては、行政や防災など情報発信手段の多様化を検討し、市民の皆様が情報を取得しやすい環境を整えていくとともに、LINEをはじめSNSの更なる活用やメールマガジンの登録者数を増やす取組みも進めてまいります。
 市役所の組織・機構につきましては、先に申し上げた伊豆山土石流災害からの復旧・復興の推進を速やかに進めていく観点から、観光建設部の復旧・復興事業と、健康福祉部の生活再建支援にそれぞれ対応する部署を設置いたします。また、自治体DXの推進を図る専門部署を経営企画部門に設置することなどにより、市民及び市内事業者の利便性の向上と市役所における事務の合理化、効率化を図ってまいります。

(2) 市民生活部門

 次に、市民生活部門についてです。
 令和5年1月末時点の本市のマイナンバーカードの交付率は、約57.7%となり、市民の半数以上の方がカードを取得されています。
 健康保険証がマイナンバーカードに置き換えられる方針が国から示されるなど、カードを活用し、生活利便性を向上させる取組みは今後さらに増えていくと予想されることから、引き続き当該カードの取得促進に注力してまいります。
 そのため、本庁・南熱海支所・泉支所においては、令和5年度も月に1度、日曜日に交付窓口を開設するとともに、申請状況に応じ、平日夜間での交付窓口の開設日を増やすなど、市民の皆様が一層カードを取得しやすい環境を作ってまいります。
 伊豆山の被災地域において、警戒区域内への立ち入りや所有資産の使用等が継続して制限されている状況から、当該資産を所有する方の税負担の軽減を図るため、令和4年度と同様に、令和5年度においても臨時特例的な減免措置を講じてまいります。
 改定を進めてまいりました「第2次熱海市男女共同参画推進計画」は、先般、熱海市男女共同参画推進会議から答申を受けたところであります。性別に捉われることなく個性と能力が認められ、活躍できる地域社会の実現を目指して、令和5年度から同計画に基づく施策の推進と進捗管理に努めてまいります。
 環境政策においても、令和4年度に策定した「第3次熱海市環境基本計画」に掲げられる施策を実行し、本市が目指す環境像「未来へつなぐ 海と山と湯のまち 熱海」の実現に向け、一歩ずつ歩を進めてまいります。
 エコ・プラント姫の沢は、稼働から25年が経過し、施設の老朽化が進行しています。「広域処理」を含めた施設更新の検討を進める中においても、現有施設の維持保全に目を配り、廃棄物の処理に滞りが生じないように努めてまいります。
 防災・危機管理につきましては、甚大なる被害を生じた伊豆山土石流災害を先例として、市民や関係機関等と連携を図りながら、地域防災力の向上と充実強化に努めてまいります。
 市民の皆様へは、地域の核である町内会や自主防災組織を通じて、防災講演会や防災出前講座などへの積極的な参加をお願いするとともに、行政と地域が意思疎通を図りながら、「自助」、「共助」の取組みを進めていただけるよう支援してまいります。
 市職員には、気象防災や災害対応に関する研修等を実施し、刻々と変化する状況を把握できるような能力を身につけ、行政の災害対応能力の向上を図ってまいります。
 また、地域安全コミュニティ活動の継続と充実は、交通安全や犯罪防止に寄与するものであります。今後も、安全で安心して暮らせる地域社会の実現に努めるとともに、不幸にも被害に遭われた市民の支援に取り組んでまいります。

(3) 観光経済部門

 次に、観光経済部門についてです。
 観光振興につきましては、昨年に引き続き大河ドラマ「どうする家康」は熱海温泉に大変ゆかりのある人物が主人公であり、静岡県、静岡県観光協会等と連携したプロモーションに取り組んでまいります。熱海市の誘客の柱であるメディア・プロモーション事業では、「地域おこし協力隊」の採用等によりSNSを活用したデジタルマーケティングの手法などを活用し、熱海の魅力を幅広く発信してまいります。
 ブルネイ・ダルサラーム国とのホストタウン交流は、2025大阪・関西万博を次のターゲットとして、相互の観光情報の紹介から、文化・経済交流、ブルネイハラル食など具体的な交流につながるよう取り組んでまいります。
 産業振興につきましては、昨年10月にリニューアルした熱海市チャレンジ応援センター「A-supo(エーサポ)」によって個別相談を充実させるとともに、ウィズコロナに対応した事業再構築や企業間連携などの機能を強化してまいります。
 また、空き家・空き店舗などの地域課題解決に向け、リノベーションまちづくり構想の具現化に取り組むとともに、魅力ある買い物環境づくりのため商店街が取り組む施設改修の支援、住宅店舗リフォームの補助、そしてテレワークの拡大により需要の高まっている移住・就業支援の補助などを行ってまいります。
 そのほか、長期化するコロナ禍において、事業者の事業活動を支援するために、経済対策貸付利子補給事業を継続するとともに、令和4年度には全ての事業者を対象としてエネルギー価格高騰へ対応するための助成を行いましたが、今後も適宜、状況に応じて産業界への支援策を講じてまいります。
 農林水産振興につきましては、農業の担い手支援による農業基盤の整備と、適切な農道・林道の整備や有害鳥獣からの被害防止に取り組むとともに、ナラ枯れ被害対策として補助金事業の延長、森林経営管理法に基づく新たな森林管理システム実施の事前準備となる意向調査を順次進めてまいります。そのほか、伊豆山土石流災害により被災した農地の復旧につきましては、土地所有者及び関係者と協議を行いながら進めてまいります。
 また、初島漁港における台風被害を踏まえ、漁港の更なる機能強化を図るための工事に着手するとともに、養殖漁業に対する支援など、漁業基盤の整備に取り組んでまいります。

(4) 建設部門

 次に、建設部門についてです。
 地域公共交通は高齢者を中心になくてはならない移動手段でありますが、市内における一部のバス路線では、人口減少等を背景とした利用者の減少により路線の維持が困難な状況となりつつあります。将来に渡って移動手段が確保できるよう、地域公共交通計画を策定し、地域にとって望ましい地域旅客運送サービスの提供に努めてまいります。
 熱海市の住宅施策につきましては、多様なライフスタイルに応じた良好な居住環境の実現に向けて、目指すべき基本的な方向性を示すために、「熱海市住生活基本計画(住宅マスタープラン)」の改定を行います。
 道路、橋梁などにつきましては、市民生活に身近な道路の利便性や安全性を高めるため、改良を積極的に進めるとともに、定期的な見回り点検を実施しながら道路の補修工事を実施してまいります。また、令和元年度に見直した「熱海市橋梁長寿命化修繕計画」に基づき、橋梁の長寿命化工事を計画的に進めてまいります。
 公園等につきましては、県の補助金を活用し、令和4年度から令和6年度までの3か年計画で、熱海梅園の橋梁及び七湯の修景整備を進めております。令和5年度におきましては、梅園の「漸佳(ざんか)」修景整備工事を実施いたします。園内を流れる初川や周辺に植栽された花木等の景観に調和するよう、自然素材を用いたデザインにより改修し、風情ある熱海梅園の魅力をより一層高めてまいります。
 七湯につきましては、「小沢の湯」、「風呂の湯・水の湯」に続き、令和5年度は「河原湯」の修景工事を進めてまいります。
 また、公園、緑地、園地における病害虫等による樹木枯れの被害拡大を防ぐとともに、樹勢回復を図りながら、引き続き市民の憩いの場の提供や観光資源としての魅力を高めてまいります。
 姫の沢公園、熱海海浜公園、市営駐車場、熱海駅前自転車等駐車場につきましては、指定管理期間が令和5年度末をもって満了となります。多様化する市民ニーズにより効果的・効率的に対応するよう、令和6年度からの管理運営を行う団体の選定を進めてまいります。

(5) 健康福祉部門

 次に、健康福祉部門についてです。
 人口減少や高齢化の進行、高齢者による単身世帯の増加、地域・家庭・職場など生活の中での支え合いの基盤が弱まっていることや、ひきこもりなどの社会的孤立など、暮らしの課題が複雑化・複合化しています。このような中、地域で孤立することなく個人が尊重され、安心した生活を送ることを目指した地域社会の実現のため、引き続き熱海市地域共生プランを実行してまいります。
 高齢者福祉・介護につきましては、令和6年度からの「第10次熱海市高齢者福祉計画」及び「第9期熱海市介護保険事業計画」の策定に向けた準備を進めるとともに、「第8期熱海市介護保険事業計画」に基づき、介護給付費の適正化や看護小規模多機能型居宅介護事業所の整備補助による介護サービスの提供基盤の確保に努めてまいります。
 子育て支援につきましては、子育て支援施策の基本方針や方向性を定めている「熱海市子ども・子育て支援事業計画」について、令和7年度からの第3期計画の策定に向け、小学生以下の児童の保護者を対象に、子育て支援のニーズ等に関する基礎調査を実施してまいります。
 障がい福祉につきましては、令和5年度に策定する「第6期熱海市障がい者計画」について、障がい福祉サービスの提供体制の確保に係る目標の設定など、障がい者施策の基本的事項について作業を進めてまいります。
 生活困窮者支援につきましては、国の様々な経済支援策により、一時的な下支え効果は表れているものの、必要な支援が継続して届くよう、熱海市社会福祉協議会など関係機関とも連携し、生活再建・自立に向けた伴走型支援の輪を広げていくとともに、状況に応じて生活保護制度による適切な保護に努めてまいります。
 健康づくりにつきましては、厚生労働省が定める国民の健康の増進の総合的推進を図るための基本的な指針としての「第三次健康日本21」を反映し、熱海市の健康課題に即した「第3次健康づくり計画」の策定を行ってまいります。
 スポーツの振興につきましては、令和5年度は「第2期熱海市スポーツ推進計画」の2年目となります。引き続きスポーツを「する」「みる」「ささえる」ことで市民誰もがスポーツに関わり、健康で豊かな生活を過ごし、活力のある地域を育むことを目指してまいります。

(6) 公営企業部門

 次に、公営企業部門についてです。
 公営企業三会計につきましては、ライフラインを担う事業として、効率的かつ安定的な事業運営に努め、安全・安心で豊かな市民生活の向上に寄与してまいります。
 水道事業につきましては、初島へ水を送っている海底送配水管布設替事業について、令和4年度より陸地部分の工事に着手しており、令和6年度の完成に向けて引き続き事業を進めてまいります。
 築造から60年を迎えた来宮浄水場の再整備につきましては、令和10年度の完成を目指し、令和5年度はプロポーザル方式による事業者の選定を実施してまいります。
 また、その他、老朽化が進んでいる施設につきましては、耐震化を図り、安全な水を安定して供給できるよう努めてまいります。
 水道広域化及び県営駿豆水道につきましては、将来を見据えた事業の在り方や料金について、静岡県の作成した広域化推進プランにより関係者との協議を行うとともに、駿豆水道の今後の受水量などについて三島市、函南町と協議を進めてまいります。また、水道料金の改定につきましては、施設の老朽化による更新費用の増加、また昨今の物価上昇などから令和6年度の料金値上げは避けられない状況でありますが、市内経済や市民生活への影響が大きいことから、経営努力を重ね、適正な改定率による料金改定を進めてまいります。
 下水道事業につきましては、「ストックマネジメント計画」に基づき、老朽化した浄水管理センター設備や管路の更新工事を進めるとともに、適切な維持管理を行ってまいります。
 温泉事業につきましては、源泉施設の整備や、老朽化した送配湯管等の更新を進め、効率的な運転管理と安定給湯に努めてまいります。
 また、温泉事業につきましても令和6年度の料金改定を予定しておりますが、水道事業同様に市内経済や市民生活への影響が大きいことから、運営の効率化に努め、適正な改定率による料金改定を進めてまいります。

(7) 消防部門

 次に、消防部門についてです。
 伊豆山土石流災害により被災した消防団詰所の建設に関しましては、「伊豆山復興基本計画」を軸に、伊豆山地区の将来像や地域の皆様のご意見を反映しつつ、十分な検討を行ってまいります。
 消防救急体制につきましては、引き続き、新型コロナウイルス感染予防対策の徹底を図るとともに、人口に対して高い水準にある救急需要に対し的確に対応するため、救急救命士の育成及び救急救命処置を行うことができる高規格救急自動車の更新整備を行ってまいります。
 火災予防対策につきましては、高齢者の安全確保を重点目標として、住宅用火災警報器の設置、取り替えの推進など住宅防火対策の強化を図るとともに、防火対象物への予防査察を強化し、違反是正の徹底を通じ、火災の予防に努めてまいります。
 消防力の要は人材です。消防職員の更なる知識、技術の向上のため、外部派遣研修を含めた研修を積極的に行い、人材育成に努めてまいります。
 今後も、地域防災の要である消防団との連携強化を図り、常備、非常備消防が一体となり、地域の安全・安心の確保に努めてまいります。

(8) 教育文化部門

 次に、教育文化部門についてです。
 幼児教育につきましては、「郷土“熱海”を愛する心」を育むため、令和5年度も継続して、市内の自然や文化を体感する教育・保育活動を進めてまいります。
 学校教育につきましては、教育委員会と学校現場との強固な連携を基本として、各小中学校に一定数存在する不登校児童生徒へのきめ細やかな対応により、その解消に努めてまいります。また、増加傾向にある特別な支援を必要とする児童生徒のための支援学級の設置、及び教員等の人的配置など、特別支援教育の充実を図ってまいります。
 令和3年度より積極的に進めておりますICTを活用した教育につきましては、引き続き授業の質の向上を図るとともに、ICTを使用した学力調査への対応やデジタル教科書が令和6年度から本格導入されることを踏まえ、タブレット端末を活用する学習環境の充実を図ってまいります。
 児童生徒が安全に安心して学校生活が送れるよう、経年劣化等による校舎屋上及び外壁等の改修工事を行い、また、トイレの洋式化等による快適性の向上など日々の簡易修繕等とあわせて、学校施設等の環境改善と維持に努めてまいります。
 社会教育につきましては、市民大学講座において、受講機会の確保と幅広い年代の受講を促進するためにオンライン講座を拡充するとともに、市民教室において引き続き、高齢者のデジタル活用を支援する「高齢者スマホ教室」を開催してまいります。
 起雲閣をはじめとする6つの文化施設につきましては、令和5年度から令和9年度までの5年間、包括的な指定管理者制度を導入いたします。制度導入後も指定管理者と積極的にコミュニケーションをとりながら、サービスの向上や各施設における入館者の低迷などの諸課題を解決するよう努めてまいります。
 (仮称)熱海文学館につきましては、外部の専門家を交えた設立準備委員会による令和4年度末に策定見込みの基本計画に沿って、杉本苑子先生の御遺志の実現に向け事業を進めてまいります。
 図書館につきましては、子どもから大人まで安心して図書館をご利用いただけるよう、引き続き、館内利用及び書籍提供の際におけるコロナウイルス感染対策を講じまいります。
 現在、若年層の低い読書率が課題となっています。このため、図書館利用の向上を目指し、電子書籍の選書の充実を図るとともに、幼年期における読書の習慣化の観点から、幼児教育保育施設への絵本等の書籍貸し出しを拡充してまいります。
 また、図書館サービスの充実を図るため、図書館協議会における議論を深めてまいります。
 以上の施策をはじめ、「熱海市教育振興基本計画(兼教育大綱)」に位置付けた目標に向け、諸施策を着実に進めてまいります。

4.むすびに

 冒頭に述べましたとおり、熱海市は引き続き多くの課題を抱え、大変厳しい状況にあります。今後、そのような厳しい状況の中、より困難さの高い課題を解決していかなければなりませんが、私はその先頭に立ち難題に取り組む覚悟であります。
 伊豆山土石流災害からの本格的な復旧・復興とコロナ禍等からの力強い経済再生を図るとともに、本市の持続的な発展を目指した「熱海2030ビジョン」の実現に向け、全身全霊で取り組んでまいります。
 議員各位、並びに市民の皆様におかれましては、特段のご理解とご協力をいただきますようお願い申し上げ、私の施政方針といたします。

令和5年2月21日

熱海市長  齊 藤  栄

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