平成24年3月市議会定例会市長施政方針
1.はじめに
平成24年3月市議会定例会が開催されるにあたり、私の市政運営についての所信を述べさせていただくとともに、24年度の施策の概要を申し上げ、議員各位並びに市民の皆様のご理解とご協力をいただきますよう、お願い申し上げます。
行財政改革の成果
本市財政が破綻の危機に直面していた平成18年12月、市民の皆様とともに市役所が一丸となってこの危機に立ち向かうため、私は「財政危機宣言」をいたしました。その後、財政再建スタートを宣言し、23年度までの5年間で市財政の健全化を目指す「熱海市行財政改革プラン」を策定、市民の皆様や市議会、産業界、そして職員のご理解とご協力の下、行財政改革に全力で取り組んでまいりました。
この行財政改革の実行に際しては、『まず市役所自らが身を削る』との考えから、危機的状況下の緊急的な対応として、市長をはじめとする特別職の報酬や職員の給与について特例の減額措置を講じました。こうした措置を自らとる中で、市民の皆様にも負担についてご理解をいただき、長期間に渡って引き上げていなかった公共料金の値上げやゴミ袋の有料化なども進めてまいりました。さらに、職員数の削減や事務事業の見直しなども行ってきました。
こうした取り組みによって、水道、下水道、温泉の公営企業3会計の不良債務が18年度からの3年間で半減するなど、行財政改革は着実に成果を上げてまいりました。そして現在、「歳入に見合った歳出構造」が実現できつつあります。これまでの関係の皆様のご理解、ご協力に改めて感謝いたします。
改革の果実
こうした改革の結果、市税収入は依然として厳しい状況にある中でも、18年度と比較した23年度末の一般会計の基金残高は約16億円の増加、市債残額は約29億円の減少が見込まれ、ようやく庁舎建設、熱海駅前広場整備、そして中学校統合といった大型建設プロジェクトを進めることができる状況となっています。これが、最大の「改革の果実」です。
「元気な経済」の実現
市長としての2期目の重要テーマは「元気な経済」、地域経済の活性化です。地域経済の活性化があって初めて、「豊かな暮らし」、市民福祉の向上が図れます。5年間にわたる行財政改革が大きな区切りを迎えたことを受け、24年度から「新生」という新たな目標を掲げますことを、皆様に報告させていただきます。
2.新生(リニューアル)熱海
生まれ変わる熱海市
これまでの数年間、そしてこれからの3年間で熱海は大きく生まれ変わろうとしています。
現在の市庁舎は昭和28年に建築されたものです。また、JR熱海駅の駅舎の開業は大正14年です。これらの建物が、平成26、27年度にかけて、半世紀ぶり以上の全面リニューアルとなります。特に熱海駅については、来遊者にとっての熱海の重要な顔であり、そのリニューアルは熱海のイメージアップにつながります。
また、花についてはこれまでに、熱海梅園は明治19年の開設以来123年ぶりに全面リニューアルし、糸川遊歩道のあたみ桜も30年ぶりに整備をいたしました。24年度からは、篤志家の多大な御支援を受けて、新たにお宮緑地のジャカランダの整備を行います。現在の構想では、この整備が終わりますと、都市部では日本一のジャカランダの集積となり、初夏にかけての本市の新たな名所になることが期待できます。
「再生」ではなく「新生」
これからの本市経済の活性化に必要なことは、熱海を過去に戻す「再生」ではなく、これまでの良さを生かしながら新しく生まれ変わる、「新生」、「リニューアル」にあります。私たちは、各種のリニューアル事業を新たな成長の機会として活かしていかなければなりません。
民間の投資を呼び込む
しかし、本市行政の政策資源は限られています。成長を実現するには、民間の活力を活用し、そして本市に民間の投資を呼び込むことが必要です。市内には、市所有の遊休地をはじめとした未利用地や民間の休止物件が多数あり、これも活かしていかなければなりません。
営業する市役所
こうした民間投資促進のためのシティプロモーションを行うため、昨年11月に副市長をリーダーとして産業振興課、総合政策推進室の職員によるプロジェクトチームを設置し、活動を開始しました。2月中に市営東駐車場のガソリンスタンド跡地について民間事業者の公募を開始するととともに、24年度はその他の市有地についても進出事業者の誘致をしてまいります。
本市にとっては、市民の皆様方と同時に、観光のお客様や産業に携わる様々な市外の企業もまた、行政の「顧客」であります。本市はこれから、「営業する市役所」として、熱海の魅力を積極的に市外に情報発信し、そして誘致活動を行ってまいります。
年間55万件のアクセスのある本市のホームページについては、24年度当初には、検索しやすく、効果的なプロモーションが可能となるよう全面リニューアルする予定です。運用面でも、編集会議を設けて、魅力的なコンテンツ作りを目指します。
人口増加施策
同時に、人口増加についても、大変難しい課題ですが、一歩ずつ取り組んでいきます。本市の人口は、毎年若年層が転出し、反対に高齢層が転入してくる構造となっているため、高齢化と出生数の減少が進展しています。この構造を打破するには、まずは本市に定住する若年層を確保していく必要があります。
本市は、新幹線が停まることもあり、東京へ通勤する方も約500人いますが、今後、駅周辺の利便性が高まり、民間の住宅等の開発が進めば、こうした通勤者が増えることは大いに期待できます。
このため、総合政策推進室において、「熱海で暮らすライフスタイル」を東京等への通勤者、ファミリー層、団塊の世代に対して訴求できるよう、魅力的なホームページと冊子を作成しているところです。24年度は、こうした情報発信の強化とともに、規制や環境整備の観点からの課題の検証や、交通インフラや商業環境なども含めた暮らしやすさの向上などの観点から、更に具体的な施策を企画・立案してまいります。
また、市内には人口3万9千人に対して、別荘所有者が個人だけで8千人近くいますので、市内経済の活性化のためにも、別荘所有者の来訪頻度が増えるような取り組みを検討していきます。
3.平成24年度の重点施策
平成24年度は、行財政改革プランが終了して迎えた最初の年、そしてまた、「新生熱海」、「リニューアル熱海」を創造する最初の年でもあります。歳出面では、大型建設プロジェクトを遅滞なく進めていくため、限られた予算で新規事業、拡充事業を考えていく必要があります。
市民生活の面では、国民健康保険税率の改定、介護保険料の改定、水道料金の2%の減額の終了、そして12月議会で可決された市営温泉料金の12%の引き上げなど、制度の安定運営のための市民負担のお願いをしています。
24年度は、こうした状況を踏まえて、「元気な経済」、「豊かな暮らし」、「行政改革」の3分野について、それぞれ重点をつけて施策を実施してまいります。
(1)元気な経済
元気な経済の実現に向けては、東日本大震災に起因する緊急経済対策から、市外部に向けての情報発信や営業活動、そして将来に渡ってそれを継続できる人材の育成や基盤作りに重点をおいて施策を行います。
産業振興、駅前商業の活性化
産業振興につきましては、既に述べた民間投資の促進のための活動に加えて、仮称「熱海市チャレンジ応援センター」事業として、市内中小企業が新商品の開発や販路の開拓のために行うマーケティング活動を支援します。また、ソムリエの田崎真也氏にも特別審査員としてご参加いただき商工会議所が認定した熱海ブランド「A-PLUS」商品の販売促進活動を支援します。
JR熱海駅ビルの整備は、成長の機会であるとともに、駅前事業者からは不安の声も聞かれます。同チャレンジ応援センター事業により、街の事業者の皆様の挑戦を応援し、駅ビルとは差別化された魅力づくりを支援します。また、ハード面では、平和通り商店街について、熱海駅前広場の整備事業にあわせ、景観に配慮した賑わいのある道路空間の創出を図ります。
観光協会の基盤作り、観光まちづくり
市内の各地区にある観光協会等が新たな枠組みにおいて協働し、一体となって誘客促進等に取り組む熱海市各地区観光協会連絡協議会に対して、事業費を支援します。これにより、各地区観光協会等の一体化や収益事業の確立がより進展し、将来の成長の基盤となることを期待します。
また、観光まちづくりについては、若年層の誘客促進や二地域居住者との交流拡大を推進する事業を自発的、主体的に実施する団体に対しての補助を拡充してまいります。
(2)豊かな暮らし
限られた財政資金の中でですが、「豊かな暮らし」の実現のため、改革の果実を市民の皆様に還元します。
子育て支援、不妊治療
子育て支援につきましては、中央保育園の建て替え工事に着手し、民設民営の新保育園として26年度からの保育の実施を目指すほか、引き続き子育てしやすい環境づくりを強化してまいります。
また、少子化対策の一環として、不妊に悩む夫婦が希望を持てるよう、新たに特定不妊治療費の一部を助成し、経済的負担の軽減を図ります。
国民健康保険税率の改定、健康増進
国民健康保険事業につきましては、市民に占める被保険者の割合が非常に高く、被保険者の高齢化が進展しており、比較的低所得者が多い状況にありますが、「給付」と「負担」の公平化の観点から、事業の健全な運営のため、平成24年度国民健康保険税の税率について改正をお願いいたします。なお、税率改正に当たっては、低所得者の負担軽減についても配慮いたします。
しかしながら、税率を改正してもなお、国民健康保険事業の運営は、依然として大変厳しい状況にあることから、保険給付費の抑制のためにも、健康づくり事業にはより積極的に取り組んでまいります。健康づくりの大きな柱のひとつである、生涯を通じた運動習慣の確立は、本市の大きな課題であることから、教育委員会と健康づくり部門の連携強化を図り、共同で様々な事業に取り組むこと等を、24年度策定予定の「健康にっぽん21熱海市計画」のなかで検討してまいります。
市民の皆様を疾病から守るため、引き続き保健事業の柱である各種検診の受診率向上に努めてまいります。がん予防対策としては、子宮頸がん検診の受診医療機関が市内に少ないため、新たに検診車による検診を実施するほか、乳がん検診の受診医療機関の拡充を図ります。また、前立腺がんの罹患率が増加傾向にあることから、新たに50歳以上の男性を対象に前立腺がん検診を追加し、費用の一部を助成してまいります。生活習慣病を早期に発見するために行う特定健診及び後期高齢者医療健診では、腎臓病を早期に発見する検査項目としてクレアチニン、尿酸検査を追加してまいります。あわせて、学校教育や社会教育、また、スポーツやレクリエーションの活動も通じて、生涯にわたる健康増進、保健予防の意識の啓発、向上や機会の拡充に努めてまいります。
新・敬老大会
高齢者施策の分野では、「行財政改革プラン」により開催されなくなった「敬老大会」を見直し、参加者に一部自己負担をいただく新たな形で実施いたします。多年にわたり本市の発展に寄与された高齢者に感謝の気持ちを表すとともに、心身の健康を保持していただけるような、新たな企画を立案して開催いたします。
安全・安心の確保
東日本大震災は、わが国の観測史上最大の地震と直後に発生した巨大津波により、一度の災害としては戦後最大の人命を失うなど、甚大な被害と多くの教訓を残しました。本市におきましても、東海地震や神奈川県西部の地震など巨大地震が発生する切迫性が増す中、市民や観光客の皆様が安心して過ごすことができる環境をつくることは、市の責務であると考えます。このため、震災の教訓を踏まえ、今まで以上に消防救急体制の充実や防災体制の強化を図ってまいります。
まず、消防職員の技術や士気を高め、組織力を強化するために、救急救命士の養成及び県消防学校等の外部研修機関への派遣を積極的に実施するとともに、本市の安全・安心を担う優秀な人材をより多く確保するために、インターンシップやリクルート活動にも努めてまいります。あわせて、地域防災の要である消防団との更なる連携強化を図ってまいります。
また、大規模災害発生後、被災者に対する速やかな支援や効果的な復旧復興業務を遂行するため、被災者支援システムを構築してまいります。
さらに、津波対策につきましては、新たに網代地区へ緊急避難路を整備するとともに、津波浸水予想区域へ津波避難誘導標識を100ヶ所設置いたします。
(3)行政改革
行財政改革プランが終了しても、「行政改革」は不断の取り組みとして行ってまいります。特にこれからは、自治体経営の政策資源である資金や職員数が限られる中で、政策資源をより重要な政策に投入していくこと、また政策の効果を高めていくこと、いわば「質の行政改革」に重点を移していきます。
質の行政改革
そのためには、職員個人の意欲や創意工夫のみに委ねるのではなく、組織として優先順位の低い事務事業の見直しや政策資源の配分変更を伴う政策の企画・立案をしていくための仕組みが必要です。23年度は、熱海方式の事業仕分けや政策ヒアリングを行いましたが、24年度以降も引き続き問題点や課題を検証しつつ、総務部と財政部が連携して、政策を企画・立案する仕組みの確立を目指します。
また、新たな「行政改革大綱」の作成や、新庁舎建設を契機に、市民サービスの向上を目指した市役所の組織・機構の見直しを行うなど、「質の行政改革」を強力に推進してまいります。
職員給与の特例減額措置の終了
行財政改革プランの一環として20年度から行ってきた職員給与の特例減額措置については、23年度末をもって終了します。これまでの職員の理解と協力に改めて感謝します。
さて、特別職の報酬については、平成4年以来19年ぶりに報酬等審議会を開催し、報酬月額を平成4年と比較して15%削減する条例案を市議会でも熱心にご審議いただいてきました。これに対して職員の給与は、人事院勧告に基づく給与改定や手当の見直し等を随時行っているため、22年度の職員の一人当たり給与は、平成4年と比較して既に15.6%削減された水準となっています。職員数も平成4年から20年で約300人減っています。こうした状況を市民の皆様にも改めてご理解をいただけるようお願いします。また、給与だけでなく、職員の業務内容についても是非知っていただきたいと思います。
このため、職員給与の特例減額措置を終了するに当たっては、職員の業務と給与について市民の理解が十分に得られるよう、職員の業務等について、これまで以上に市民に対して情報を開示する機会を設けるとともに、人事評価制度や研修制度など、職員の意欲や能力を伸ばす仕組みを検討、具体化してまいります。
職員数が限られる中で、職員は市の財産であり、最大の経営資源と考えます。職員が高い意欲と誇りを持って業務に取り組めるような行政運営を目指します。
振興公社の改革
熱海市振興公社は、市有地を活用した市営駐車場の運営や、市の観光施設、文化施設の運営業務を担うなど、市の行政と密接な関係があり、「質の行政改革」を進めていくためには、その業務見直しは避けて通れません。
熱海市振興公社は、公益法人制度改革に伴い、25年度には公益認定を受けた新たな財団法人となることを目指し、現在準備を進めています。このことを契機として、今後数年間かけて、市の立場からも、熱海市振興公社の改革にも取り組んでまいります。
以上のような方針により編成した結果、平成24年度一般会計の予算規模は、175億4千3百万円で前年対比1.5%の減となり、特別会計、公営企業会計を合計いたしますと345億円で、前年対比1.6%の減となりました。
4.各部門の主要施策
続きまして、平成24年度の主要施策について、部門毎に説明申し上げます。
総務・財政部門
はじめに、総務・財政部門についてです。
市税の賦課徴収については、本市の納税者は市外居住者の割合が多いという特殊事情などを踏まえ、25年度当初から市税をはじめ水道や下水道料金等をコンビニエンスストアでも納めることができるよう、「納付しやすい環境づくり」に取り組んでまいります。
「温泉の利活用」については、昨年12月定例会での観光建設公営企業委員会委員長報告も踏まえて、温泉を貴重な資源ととらえ、価値を高め、ブランド化することで利用者や使用量の増加策を検討してまいります。また、地域経済の活性化につながる「温泉イノベーション」を引き続き推進し、新エネルギーの利活用として低温度差発電システムの取り組みも進めてまいります。
市民福祉部門
次に、市民福祉部門についてです。
現在、65歳以上を対象としている介護予防事業のうち、一次予防事業については市の担当部署を「健康と子育て支援課」とし、参加者の対象年齢を引き下げ、若い頃からの健康づくり事業の一環として行います。
特に、本年度は、運動器の機能向上と認知症についての事業を中心に展開してまいります。
運動器の機能向上については、若年層からの積極的な取り組みをすすめるべく、個々の体力測定の結果をもとに体操プログラムを提示し、運動機能を伸ばす教室を開催するほか、市内2箇所で定期的な体験講座を開催して「湯楽YOU楽(ゆらゆら)体操」の普及に努めます。
認知症についての事業としては、市内各地区で認知症を知る勉強会を開催するほか、認知症の方との接し方を学ぶ講演会を開催します。
その他、地域住民が自らの意思で健康づくりに取り組む姿勢を支援するため、住民と一緒に健康講座を企画・開催いたします。
また、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けるために、地域の皆様で見守り、支えていく「地域見守りネットワーク」の一層の充実を図り、ネットワークを構成する「協力機関」を増やしてまいります。
環境にかかる施策につきましては、市民からのニーズが高い住宅用太陽光発電導入費補助の継続、拡大を図ることにより、二酸化炭素の排出量削減に取り組んでまいります。
ごみ処理施設「エコプラント姫の沢」につきましては、焼却炉を隔週運転から1カ月連続運転に変更し、設備の温度差による劣化を低減することで、延命化を図ります。
また、し尿処理施設につきましては、中断していた湯河原町との共同整備についての協議を再開し、広域行政による整備の実現に努めてまいります。
観光経済部門
次に、観光経済部門についてです。
基幹産業である宿泊施設への誘客促進につきましては、特に閑散期となる春季を対象として、旅行エージェント等とタイアップをして、宿泊客の増加とともに市内回遊の機会向上にもつながるような取り組みを行う熱海市ホテル旅館協同組合連合会に対して支援を行います。
広域観光の推進につきましては、箱根・湯河原・熱海・あしがら観光圏内のフリーパス運営事業や国内外の富裕層をターゲットとしたメディカルツーリズムを推進するほか、観光関連学科を有する大学等と連携しニューツーリズムの造成に取り組みます。
熱海の名を全国に知らしめた小説「金色夜叉」を現代版によみがえらせ、再び熱海を全国にアピールする仮称「日本映画・TVストーリーデザイン大賞」事業を支援してまいります。
魅力ある観光施設づくりとして、熱海梅園につきましては、有料化の収益を園内の維持管理や基金に充当し、さらに磨きをかけてまいります。
泉公園につきましては、県道拡幅に合わせ、園内の魅力の拡充に着手します。
さくらの名所散策路につきましては、地質調査を実施し、JRとの協議を開始します。
小山臨海公園につきましては、効率的な運営と利用者の利便性を向上させるため、指定管理者を公募します。また、マリンスパあたみにつきましては事業を総括し、再度の指定管理に取り組みます。
既に述べたとおり、24年度からジャカランダの整備を進めてまいりますが、本市のジャカランダは、ポルトガルのカスカイス市と国際姉妹都市の提携の記念として植えられたものです。このため、24年度の国際交流については、同市からの要請に応じて訪問し、ジャカランダの活用を軸とした交流を行います。なお、中国広東省珠海市との国際交流も更に促進します。
文化施設につきましては、起雲閣が指定管理の初年度となることから、更なる施設の活性化に努めてまいります。澤田政廣記念美術館や創作の家等の他の文化施設につきましては、施設ごとの個性や魅力をアピールするとともに、施設相互の利用を促進してまいります。
建設部門
次に、建設部門についてです。
都市基盤整備は、市民そして多くの観光交流客の皆様に対して、安全で快適な空間を提供する重要な施策です。
熱海駅前広場の整備事業は、伊豆の玄関にふさわしい風格、賑わい、開放感の創出と利便性の向上を図るため、23年度に着手したところです。本年6月には、新たなバス停が完成、共用を開始いたしますが、24年度の事業として、引き続き一般車両の一時駐車場、旅館・ホテルなどの送迎バスの降車場、足湯などを整備してまいります。
市民生活に密着した生活道路につきましては、地域住民の皆様の意見を十分に反映した道路環境の整備を推進してまいります。また、広域交通網につきましては、伊豆縦貫自動車道や伊豆湘南道路など、交流促進に資する整備、検討を推進してまいります。
渚地区及び長浜地区のコースタルリゾート計画につきましては、「魅力的なまちづくり」という観点から推進し、海岸部の積極的な利活用に取り組むことで、本市と富士箱根伊豆エリアの「海の玄関」としての新たな魅力の創出に努めてまいります。
「熱海まちづくりビジョン」に示された市役所・湯前神社・銀座周辺の「熱海のへそ」につきましては、市民、NPO団体、観光産業等に携わる方々と学識経験者等のアドバイスも受けながら、その具現化に向けた取り組みを進めてまいります。
各地域の自発的なまちづくりへの取り組みに対しても支援を行い、また、安全・安心のまちづくり施策として、市民の皆様が行う地震対策を木造住宅耐震補強制度の活用により支援してまいります。
懸案でありました市庁舎の建て替えにつきましては、分庁化による整備を進めることとし、昨年、文化会館耐震事業に着手いたしました。完了後は議場等を移転し、観光会館、中央町駐車場を取り壊し、跡地に新しい庁舎の建設を進めてまいります。
新しい庁舎は、限られた財源や建築面積等の制限の中で求められるすべての要望に応えられるとは言い難いものでありますが、防災拠点として機能し、同時に市民の皆様にも利用しやすい、利便性の高い庁舎を目指してまいります。
上下水道温泉部門
次に、上下水道温泉部門についてです。
財政健全化法における本市の公営企業会計の資金不足比率は、水道及び温泉事業会計につきましては、22年度決算において資金不足額が解消され、23年度決算見込みにおいても算定されない見込みであり、着実に改善しております。
下水道事業会計につきましては、解消可能資金不足額の考え方が取り入れられたことで資金不足比率は算定されませんが、依然として16億円を超える実質資金不足額が存在しております。
このような状況の中、公営企業会計は経営健全化に取り組んでまいりましたが、短期的には東日本大震災の影響から、中期的には観光客の減少や市民の節水志向から、今後は減収が予想されます。一方で、老朽化した施設を改善していかなければならないという緊急の課題もあります。
公営企業3会計とも厳しい現状にありますが、3会計の財政計画を加速させ、引き続き経営健全化に取り組むことにより、安定した企業経営のもと、公衆衛生の向上と生活環境の改善に努めてまいります。
次に、公営企業3会計の24年度の主要事業です。
水道事業につきましては、24年度の梅園配水池の完成にあわせ、配水経路を見直すとともに、自己水源の最大限の活用を図ってまいります。また、引き続き安定給水のため老朽施設の改修・老朽管の布設替えを行い、災害に強い施設の構築を図ってまいります。
なお、県営駿豆水道からの受水費は、本市水道事業の費用の半分を占めるものであり、契約水量の見直しをはじめとする費用軽減の方策については、同様に受水している三島市、函南町と共同して、静岡県に対して粘り強く働きかけていきます。
下水道事業につきましては、老朽化した浄水管理センター設備の更新を進め、公共用水域の水質保全を目指してまいります。また、長寿命化計画のもと、老朽管の布設替えを実施してまいります。下水道の普及促進については、23年度に引き続き長期資金の利息減額相当分を、遅れている面整備に充て、普及率の向上に努めます。
温泉事業につきましては、24年4月徴収分から温泉料金を平均12%値上げする料金改定を予定しております。値上げによる増収は、借入金の解消を含む経営健全化及び老朽化した施設の更新に充て、安定給湯と災害に強い施設の構築を目指してまいります。
市営温泉を利用されている方には更なる負担をお願いいたしますが、当事業の運営に、引き続きご理解とご協力をお願いいたします。
教育部門
次に、教育部門についてです。
未来をひらく人づくりを推進するために「熱海市教育振興基本計画」に基づく諸施策を展開し、次代を担う子どもたちがたくましく心豊かに成長する教育を推進します。また、夢と志をもって豊かな未来を切り拓く人材育成に継続して取り組み、市民が「いつでも、どこでも、だれでも」参画できる生涯学習社会の実現にも取り組んでまいります。
学校教育につきましては、26年4月の熱海中学校・小嵐中学校の統合を最重要課題ととらえ、強力に推進してまいります。24年度は新校舎改築工事に着手するとともに、統合準備委員会及び各種専門部会による検討を進め、統合に係る様々な課題や諸問題にも引き続き取り組んでまいります。また、21世紀を担う子どもたちの育成という観点から、新たに幼稚園担当の指導主事を配置し、特別支援教育の充実も含め、子ども一人ひとりの特性や発達段階、障がいの状況等に応じた指導の充実と、教員が一人ひとりの子どもと十分に向き合うことができる環境の充実に努めてまいります。さらに、幼稚園・小学校・中学校の連携及び家庭・地域・学校の連携を拡充しながら新たなネットワークを構築し、教育を取り巻く様々な環境の変化に対応していくための体制強化を図り、本市教育力の向上と特色ある学びの創出に努めてまいります。
社会教育につきましては、市民の多様な生涯学習のニーズに応えていくために、これまでの活動に加え民間とも連携した学習への支援等を通じて、市民の生涯学習機会の充実を図るとともに、生涯学習の成果が地域社会に還元され、社会の活性化につながるよう、人材活用のさまざまな仕組みづくりを行ってまいります。また、スポーツに対するニーズは年々多様化し、高まりを見せております。だれもが自由にスポーツや健康づくりに取り組める環境の整備に努めてまいります。
図書館につきましては、「第二次熱海市子ども読書活動推進計画」が策定されたことに伴い、図書館を中心に、家庭・地域・学校などとの連携強化を図り、子どもの読書環境整備を推進してまいります。また、情報発信の拠点として、「熱海の歴史を学べる図書館」として、資料や情報の収集・提供に努め、貴重な郷土資料の展示を充実・継続し、市民に親しまれ役立つ図書館を目指します。
消防・防災部門
次に、消防・防災部門についてです。
本市では、安全で住みよい地域社会の実現を目指し、自主防災会や消防団、事業所などの連携により、様々な活動を実施してまいりました。特に地震対策につきましては、東日本大震災の教訓も踏まえ、これを強化するとともに、長年取り組んでいる事業を確実に実施することにより、被害の軽減に努めてまいります。また、急激な少子高齢化や社会環境の変化などにより、想定外の新たな危機事案が発生する恐れがあることから、消防救急体制の充実、防災・防犯体制の強化を図ってまいります。
消防対策につきましては、福祉、防災並びに関係機関と協働し、高齢者対策をはじめ、住宅用火災警報器の設置促進を図ってまいります。
また、本市の救急需要は人口10万人都市に匹敵することから救急体制の強化に努めるとともに、迅速で的確な出動体制を確立するため、消防庁舎移転に伴う高機能消防指令センターの整備計画や、火災等による被害を軽減するため、病院・社会福祉施設等の警防計画を策定します。
消防力の強化事業につきましては、消防署南熱海出張所の老朽化した高規格救急自動車の更新配備、はしご自動車のオーバーホールを行い、安全の確保に努めるとともに、老朽化した40箇所の消火栓改良工事を行い、消防水利の整備に努めてまいります。
防災対策につきましては、引き続き家具の転倒防止や建物の耐震化を推進するとともに、地域防災の要である自主防災会を支援してまいります。
通信情報システムにつきましては、静岡県との共同整備により防災行政無線のデジタル化を図り、情報収集伝達機能を強化してまいります。
土砂災害の対策につきましては、円滑な警戒避難を確保するため、土砂災害ハザードマップを作成・配布いたします。
高齢者対策につきましては、75歳以上で、ひとり暮らしの非課税者に対し、防災ラジオ500台を昨年に引き続き無償で配布いたします。また、消防・福祉と連携を図り、自力避難が困難な災害時要援護者の支援対策を強化してまいります。
防犯対策につきましては、暴力団による不当な行為と被害を防止するため、警察や関係団体と緊密な連携を図るとともに、新たに仮称「熱海市暴力団排除条例」を制定し、地域防犯力を高めてまいります。
5.むすびに
これからの3年間、熱海市は大きな正念場を迎えます。以上ご説明した平成24年度の施策、事業には、その初年度として、いずれも従来の熱海市行政の枠を超えた新しい挑戦が盛り込まれています。「新生熱海」、「リニューアル熱海」の実現に向けては、熱海市行政のみならず、市議会、産業界、そして市民が一丸となって取り組んでいかなくてはなりません。
市民の皆様、そして議員の皆様におかれましては、特段のご理解とご協力をいただきますようお願い申し上げ、私の施政方針といたします。
平成24年2月23日
熱海市長 齊藤 栄
予算の概要は下記をご覧ください。
施策の概要は下記をご覧ください。
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