令和2年2月市議会定例会市長施政方針

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ページ番号1007668  更新日 令和2年5月19日

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令和2年2月議会市長 施政方針

2月25日に行われました令和2年2月市議会定例会において、市長が施政方針を述べました。

1.はじめに

 令和2年2月市議会定例会が開催されるにあたり、私の市政運営についての所信を述べさせていただくとともに、令和2年度の施策の概要を申し上げ、議員各位、並びに市民の皆様のご理解とご協力をいただきますよう、お願い申し上げます。

熱海躍進のための礎づくりをさらに加速していく年

 昨年、元号が平成から令和に変わりました。熱海市における平成の30年間を振り返った時、その社会構造の変化の大きさには驚くべきものがあります。人口が減少し続ける中、高齢化率は約3倍となりました。また、ピーク時よりも市税収入が約3割減少する一方で、社会保障関係経費は約5倍に増加するといった厳しい変化です。
 このような状況を踏まえ、人口減少の社会情勢にありながらも、経済の持続的発展と豊かな市民の暮らしを実現できる、温泉観光地の全国モデルを創ることを目指したものが「熱海2030ビジョン」です。
 令和元年度は「熱海2030ビジョン」の下、熱海躍進のための礎づくりに本格的に着手する年と位置付け、「観光・経済の活性化」、「教育・福祉の充実」、「仕事・くらしの変革」の三本柱について、それぞれ重要施策の実現に取り組んでまいりましたが、令和2年度は、この取組みをさらに加速していく必要があります。
 併せて、平成23年度にスタートした、「第四次熱海市総合計画」が令和2年度末に計画期間が終了となることから、本市のまちづくりの基本的な指針となる「第五次熱海市総合計画」を策定してまいります。
 市民、産業界、議会、行政が一体となって初めて、熱海における新たな時代を切り拓いていくことが可能となります。改めまして、市民、産業界、議員の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。

2.令和2年度の重点施策

(1) 観光・経済の活性化

 熱海市を訪れるすべての方々の満足度を高め、また、市民のくらしを豊かにする原資を稼ぐべく、観光・経済の活性化を図ってまいります。

1.観光地経営の仕組みづくり

 市民、産業界の皆様のご尽力により、熱海市の観光は息を吹き返し、全国的にも注目をいただいております。また、さらなる熱海市発展の可能性を認め、宿泊施設などの進出の動きが複数あることは、市内経済の活性化に寄与するものと期待をしております。
 「オール熱海」での体制で観光振興に取り組んできた成果は、ここ数年の観光交流客数の増加として表れておりますが、この状況が継続する保証はなく、予断を許さない状況であると認識しております。熱海市の観光をさらなる高みに引き上げていくためには、産業界の皆様とともに、より強固な協力体制を築くとともに、観光行政の仕組みを大きく変革すべきタイミングであると考えております。
 そのため、熱海市の観光の方向性を市民、産業界、議員の皆様と共有するべく、「変化しつづける 温泉観光地 熱海」を基本理念とし、当面の目指す姿を「首都圏顧客支持率ナンバー1 温泉観光地 熱海」と位置付ける新たな観光基本計画を策定するとともに、その中で観光地経営の舵取り役となる体制の構築を進めてまいります。
 新たな体制は、熱海市の観光行政が抱える課題である「専門性の欠如」、「事業執行の機動性」、「ノウハウの継続性」を解決・補完すべく、官民の垣根を超えた熱海市独自の手法を検討しております。温泉観光地としてトップランナーを目指し、また持続していくために必要となる安定的な観光財源の確保策についても併せてお示しし、関係各位のご理解をいただきたいと考えております。

2.静岡デスティネーションキャンペーン等を契機とした積極的な誘客施策と来遊客の満足度向上

 JRと地元自治体等による静岡デスティネーションキャンペーンは、本年4月から6月にアフターDCとして開催されます。また、いよいよ東京2020オリンピック・パラリンピックが近づいており、こうした貴重な機会を捉え、引き続きシティプロモーションや誘客施策を展開し、熱海の地域ブランドを確立していく必要があります。
 静岡DCにつきましては、平成30年にプレDC、令和元年に本番DCが行われましたが、平成29年から令和元年までDC期間中の宿泊客数がそれぞれ前年対比で3%程度増加する効果がありました。最終年となる本年のアフターDCにつきましては、JR東日本との協働によるQRコードを利用したスタンプラリーのほか、首都圏若年女性層をターゲットとした平日・日曜日誘客キャンペーンの実施、また、MOA美術館による舞踊公演「熱海座」や、熱海芸妓による文化的な取組みを支援し、今後の観光施策の柱となりうる事業を試行してまいります。
 東京2020オリンピック・パラリンピック開催により増加が見込まれる外国人旅行者への対応として、クレジット決済環境や自動翻訳機の導入を促すとともに、多言語パンフレットやホームページの充実、静岡ツーリズムビューローなどの広域組織と連携したプロモーション事業や、ユニバーサルマナー研修などを実施し、多くの外国からのお客様に熱海市の魅力に触れていただき、満足いただける空間づくりに取り組んでまいります。
 多くのお客様に何度も熱海の魅力を体感していただくためには、市内各エリアの資源を磨き上げる努力を継続的に行うとともに、回遊しやすい環境の整備が必要です。現在、各エリアの観光協会・旅館組合の皆様を中心に、伊豆湯河原温泉の「蚤の市」、伊豆山温泉の「心、満たし旅!」、網代温泉の「フォトコンテスト」、多賀地区の「四季の道桜まつり」など、地域資源を活かした新たな取組みが始まっております。また、市民参加のファッションショー「アタミコレクション」など市民団体による観光まちづくりの取組みも活発になっております。引き続き地域や市民が企画・運営する観光まちづくり事業を支援してまいります。また、エリア間の回遊性を高めるため、交通事業者等との連携を強化してまいります。
 平成25年度より取り組んでおります、観光ブランド・プロモーションとしての「意外と熱海」プロジェクトは、「ADさん、いらっしゃい!」事業のメディア・プロモーションと相まって、宿泊客数の増加、ターゲットとしたF1層(20~30代女性)への認知拡大に効果があったものと評価しておりますが、一方で「食の魅力アップ」、「夜の賑わい創出」など新たな課題が浮き彫りとなっております。今後、ブランド・プロモーションの更なる進化について検討していく必要があるものと認識しております。
 「夜の賑わい創出」につきましては、これまで飲食店への誘導策を中心に考えておりましたが、併せて夜のまちに人が出る仕組みが必要であります。熱海海上花火大会はその最たるものでありますが、糸川遊歩道のあたみ桜ライトアップや、お宮緑地のジャカランダライトアップが好評であることから、ジャカランダと同時に楽しめる糸川遊歩道のブーゲンビリアのライトアップなどナイトスポットの整備に取り組んでまいります。
 熱海港湾エリアは、本市の重要な観光資源の一つであります。事業が遅れている熱海港海岸環境整備事業渚第4工区につきましては、工事を加速するように県とも協議を進めながら、早期完成に向けた要望活動も含め、熱海港湾エリアの賑わい創出について取り組んでまいります。
 初島への来遊客をお迎えする玄関口となる初島漁港交流広場の整備につきましては、一昨年、昨年と続いた台風の被害により工期が大幅に遅延しましたが、現在、本年3月の竣工に向けて作業が進められております。新たに設置される休憩施設が初島を訪れる方々の憩いの場となるよう、地域の方々と協力して、その活用に努めてまいります。
 姫の沢公園管理棟につきましては、自然豊かな都市公園の新たな拠点施設「姫の沢公園ビジターセンター」として生まれ変わります。この姫の沢公園における新たなランドマークを中心に、「自然とのふれあいを通じたレクリエーション・環境学習に寄与する事業」や「リニューアル後のスポーツ広場における健康増進・スポーツ振興に寄与する事業」などについて、主体となる指定管理者と連携・協力しながら実施していくことにより、公園全体の魅力アップと利用促進に取り組んでまいります。
 また、小山臨海公園管理棟につきましては、運動に親しむ公園の活動拠点として、水周りや空調設備などの施設機能を向上させることにより快適な利用環境を整えるべく、令和2年度中の完成を目指して改修工事に着手してまいります。
 観光施設の整備に加え、歩いて楽しいまちづくりの形成に向け、検討を進めてまいります。具体的には、熱海駅・市役所周辺の中心市街地における移動の円滑化を図るための歩道改修を進めることに加え、回遊性向上策を検討し、居心地が良く、歩きたくなる「まちなか」の創出に取り組みながら、賑わいをより広いエリアに広げることに努めてまいります。

3.地域経済の活性化

 熱海市を持続可能な魅力あるまちとするためには、熱海市に関心を持っていただける関係人口を増加させつつ、熱海市への関与の度合いを高めることで、地域経済の活性化に取り組む必要があります。
 ATAMI2030会議は、地域課題の共有、地域資源の掘り起こし、人材のマッチングの場として市内外から多くの方々に参加いただいております。リノベーションまちづくりと、創業支援、そしてATAMI2030会議の取組みは、地域課題の解決、新しい働き方などの自己実現の一つの方策として可能性の高い事業であると認識しており、引き続き内容を精査しつつ取り組んでまいります。
 熱海商工会議所と連携して取り組んでおります熱海市チャレンジ応援センター(A-biz)は、平成29年11月に全国公募により採用したチーフアドバイザーの着任以来、既存事業者の「稼ぐ力」を引き出すための相談業務や、新たに熱海市をフィールドとして創業を目指す方々へのアドバイス、さらに事業者間のマッチングに取り組み、昨年には延べ1,000件を超える相談がありました。引き続き、地域経済の下支え役として事業に取り組んでまいります。
 また、農業や漁業の振興と観光とを融合させる6次産業化は、観光地としての魅力を高め、地産地消による地域経済の域内循環を促すこととなります。農業委員会などの協力により、新たに就農しようとする方々をサポートするとともに、農産物・海産物の域内消費の拡大について検討してまいります。

(2)教育・福祉の充実

 豊かな市民の暮らしを実現すべく、教育・福祉の充実を図ってまいります。

1.子育て・教育環境の充実

 まず、就学前環境の充実です。平成30年度より整備してまいりましたあたみこども園につきましては、本年6月に園舎完成を予定しており、7月より開園する運びとなりました。新しい園舎に加え、体験を中心とした新たなカリキュラムを導入するなど、本市の幼児教育につきましては、認定こども園のみならず、幼稚園・保育園すべての質の向上を図ってまいります。また、保護者の経済的負担に配慮し、少子化対策を目的として、国の幼児教育・保育の無償化とならなかった給食費(副食費)につきましても、3歳から5歳児を対象に本市独自の無償化を行ってまいります。
 次に、安心して子どもを産み育てる環境の整備です。出産に関する支援事業として、出産予定の妊婦を対象に「あたみっ子出産応援金」支給事業を創設するとともに、救急車を活用し出産時の病院への移動を支援する「あたみマタニティ・サポート119」を開始します。
 次に、学校教育における児童生徒の確かな学力の定着と向上のため、学校のICT(情報通信技術)環境整備について本格的に進めてまいります。まずは、学級での発表や話し合いなどの利用に効果が期待される大型提示装置を小中学校、全ての普通教室に設置するとともに、教員がさらにICT機器を活用して指導できるよう、研修を行ってまいります。
 併せて、学校施設環境の向上と児童生徒が安心して過ごせる教育環境を確保するため、引き続き、学校施設等の修繕や学校のトイレの洋式化に注力します。また、多様化、複雑化する学校における諸問題をより迅速・適切に対応し、教員が教育活動に専念できるようスクールロイヤー事業を開始します。
 そして、平成30年度より総合教育会議において議論しております、次期教育大綱・教育振興基本計画及び学校等施設の適正規模・適正配置計画につきましては、教育振興審議会において、地域の方、教育関係者のご議論をいただいた上で策定してまいります。

2.熱海版地域包括ケアシステムの構築

 市民の誰もが、生きがいを持ち、安心して暮らし続けられるまちを作るため、熱海版地域包括ケアシステムの構築を進めてまいります。
 福祉分野の上位計画である地域福祉計画について、令和3年度の改定に向けて議論を進めます。計画では、地域住民等が世代や分野を超えてつながり、支え合う「地域共生社会」を目指し、制度の狭間にあるケースや複雑な課題を抱えるケースにも対応できる「福祉の総合相談機能」や「多様な形の社会参加につなげる支援」について、総合福祉センターの活用方法も含めて検討してまいります。
 高齢者の介護や生活支援のニーズは人によって様々です。特に比較的軽度な「要支援者」の多様なニーズに応えられるよう、短時間型のデイサービスや、住民による介護予防・生活支援の取り組みに対する補助を創設します。
 介護予防事業と保健事業につきましては、専門職の体制を整備して一体的に取り組むこととし、ハイリスクな方には専門職がアウトリーチして支援する取組みや、地域サロン等への支援を強化するなど、地域展開を一層進めてまいります。
 要介護状態になっても住み慣れた地域で暮らすためには、医療・介護の連携が重要です。特に、身寄りのない方への円滑な医療・介護の提供に支障が生じていることから、「身元保証の無い方の入院・入所ガイドライン」を策定して普及を図ります。
 障がい福祉につきましては、相談支援事業の充実をはじめ、地域生活支援拠点の整備に向けて、引き続き事業者との協議を進めてまいります。

3.健康寿命の延伸

 市民の健康寿命の延伸は、本市における経済の持続的発展と豊かな市民の暮らしの前提となるものであり、そのためにも、自身の健康状態を知り、病気の予防・早期発見につながる健診を受診していただくことが重要となります。
 特定健康診査受診率向上の新たな取組みとして、受診者の中から抽選でA-PLUS商品が当たるインセンティブ事業を実施してまいります。また、過去の受診歴や健診結果データ等に基づくAIを活用した受診勧奨ハガキにより、個々に応じた受診勧奨を行います。

(3)仕事・くらしの変革

 観光関連産業や地域コミュニティ活動など、市民生活の基盤を確保していくため、仕事・くらしの変革を図ってまいります。

1.観光関連産業の競争力強化に向けた検討

 熱海市の基幹産業である宿泊産業を中心とした観光関連産業が、働く場として選ばれる産業になり、産業としての競争力を高めていくことが、本市の経済の持続的な発展に不可欠です。
 観光関連産業の競争力強化に向け、先端設備等の導入に対する支援、雇用確保のための住環境の整備、外国人労働者の確保、個々の事業者のターゲットとする顧客へのアプローチ等、産業としての共通課題を整理し、その対応策を検討してまいります。

2.地域コミュニティ活動の支援

 各地域でのコミュニティ活動を担う町内会や市民が主体的に行動する団体につきましては、その存続や活動の継続に対して不安を抱くなどの課題を持っております。
 そのため、令和2年度は課題を持つ団体に市職員が参画し、団体の皆様とともにその現状と課題を正確に捉え、解決策をともに考えていくという取組みを進めてまいりたいと考えます。
 さらに、令和元年度からスタートした「地域づくり勉強会」で紹介された“小規模多機能自治”を持続的に進めるために、「事業として自立する方法」などを考え、団体が今後も継続的に活動できるような施策をともに探求してまいります。
 このような先進的取組みを行う町内会や団体の活動が、他の団体に先行事例として認識され、これに追従する取組みを始めていただけるように様々な情報を提供、共有し、協働してまいります。
 令和2年度に予定しております「地域づくり勉強会」につきましては、より多くの参加者を募るとともに、令和元年度よりも時間をかけて講座を実施し、小規模多機能自治に対する理解を深め、市民自らの主体的な取組みへの意識醸成と行動への動機付けを積極的に進めてまいります。

3.市民インフラ整備、市民・観光客の安全・安心の確保

 市民生活に不可欠な公共施設の整備、安全・安心を守るシステムの導入に取り組んでまいります。
 昭和41年に竣工、業務を開始した市役所南熱海支所、消防署南熱海出張所につきましては、平成30年5月から全面建て替えに向けた解体に着手、令和元年12月には新たな庁舎において業務の一部を再開いたしました。
 新しい南熱海支所、消防署南熱海出張所は、人にやさしい施設となるよう多目的トイレやエレベーターを設置し、全館バリアフリー対応としたり、様々な用途で利用できるよう調理場を備えた会議スペースや図書コーナーをはじめとした軽飲食ができるスペースを確保、災害時の拠点となるよう備蓄倉庫や屋上に津波一時避難スペースを確保するなど、旧庁舎から格段に機能が向上いたします。
 今後、住民記録などの情報システムや通信・事務機器などを整備し、令和2年5月上旬の業務全体の再開を目指します。
 (仮称)熱海フォーラム整備事業につきましては、平成29年2月の施政方針において事業の延期を表明し、改めて令和元年度から検討を再開いたしました。その中で、「世代を超えて市民が集う場を創出する」との原点に立ち返り、フォーラムの機能を見直してまいりました。
 フォーラムには、元々公共広場という意味があります。この公共広場に世代やバックグラウンドの異なる人々が集い、交流が進み、それぞれが連携しながら、市民の自主的な活動が展開されていく。(仮称)熱海フォーラムは、その拠点となることを目指す施設であります。
 施設の中心となる機能を市民ホールと市民交流センターとし、施設規模や配置に関する基本的な計画の検討に取り掛かります。併せて、官民連携の整備手法を模索しながら、施設完成後の運営方法などについても検討を進めてまいります。
 平成18年に廃止した市立養護老人ホーム梅園荘につきましては、国・県との協議が終了したことを踏まえ、安全性確保や防犯、景観上の配慮の観点から令和2年度に解体してまいります。また、解体後の跡地の利活用につきましては、様々な角度から検討してまいります。
 上水道は日常生活に欠かせない重要なライフラインのひとつです。将来にわたり、安全な水を持続して供給できるよう、使用を休止していた水源の開発を進めているところです。今後は浄水場の整備を行い、自己水源の活用拡大に努めてまいります。
 市民の生命と財産を大地震の際の津波被害から守るため、津波対策の方針に基づき、県に対し、必要な防潮堤や水門の早期整備を引き続き要望していくとともに、市としても避難路の整備をはじめとしたソフト対策を講じ、安全・安心の確保を図ってまいります。令和2年度は、網代地区及び伊豆山地区において避難路の整備を実施してまいります。
 全国各地で多発する災害に備え、市民の安全・安心の確保に向けて積極的に取り組んでまいります。
 災害対応に万全を期すため、緊急消防援助隊の登録車両としての救助工作車をはじめ、消防団第2分団消防ポンプ自動車の更新整備など、更なる消防力の充実強化を図ってまいります。
 また、聴覚、言語障がいのある方が、いつでもどこからでも円滑な緊急通報を行えるよう、スマートフォンなどの端末を活用した、NET119緊急通報システムを導入してまいります。

3.各部門の主要施策

 続きまして、令和2年度の主要施策について、部門毎に説明申し上げます。

(1) 経営企画部門

 まず、経営企画部門についてです。
 適切に公共施設の維持管理、修繕、更新等を行っていくことは市政運営にとって極めて重要な課題の一つと考えております。熱海市公共施設個別施設アクションプラン第1期に基づき、優先順位を見極めつつ、老朽化が進んだ公共施設の改築・修繕等を行うなど、着実に公共施設マネジメントを推進してまいります。
 また、公共施設マネジメントの一環として、老朽化が進んでいる市役所第2庁舎をはじめとした市役所敷地内に存在する庁舎等につきましては、長期的な視点に立ち、将来的な維持管理及び配置の在り方について検討してまいります。
 職員採用につきましては、職員は最大の経営資源であることから、引き続き意欲と能力の高い職員の確保を目指した採用を行ってまいります。また、職員一人ひとりが自主的に創意工夫とチャレンジ精神を持って行動するための民間研修や自主研修の実施など、研修の多様化による人材の育成を行うとともに、コンプライアンスやハラスメントに対する意識を醸成し、組織力の強化にも取り組んでまいります。
 また、令和2年度から非正規職員の任用制度が会計年度任用職員へと変わることに伴い、賃金等の処遇改善を行ってまいります。
 情報システムにつきましては、基幹系システムの見直しが令和3年度に迫っていることを踏まえ、近隣市町と連携し自治体クラウドの導入を進め、行政事務の質の向上に努めながらも経費の削減を図ってまいります。
 広報につきましては、市民や観光客がどこにいても簡単に行政情報や防災情報、観光情報を取得できるコミュニケーションツールであるSNSの更なる活用を図ります。
 令和2年度末で計画期間が終了する「第四次熱海市総合計画」及び「熱海市まち・ひと・しごと創生総合戦略」につきましては、次期総合計画の策定に向け、市民と市職員による合同会議や審議会の開催など、市民参画を得ながら、引き続き作業を進めてまいります。

(2) 市民生活部門

 次に、市民生活部門についてです。
 市民生活部門につきましては、市民生活課において、民間企業からのシステム提供による窓口受付システムを導入し、待ち時間の見える化を図るなど利用者の利便性の向上を図っております。
 さらに、来庁せずとも各種の証明書等をコンビニで取得できるマイナンバーカードの取得勧奨に努めており、令和元年11月1日現在の総務省データによると、静岡県内の市における人口に対する交付枚数率では富士市の19.2%に次ぐ19.1%と高位に位置しております。国におきましては、マイナンバーカードを利用した多様なサービスの提供が計画されていることから、今後も取得勧奨を積極的に進めてまいります。
 また、南熱海支所の完成を目前にし、従前どおりの支所機能に支障を来さぬよう移転事務等を円滑に進めてまいります。火葬場につきましても、一連のリニューアル・リノベーション工事を終え、より使いやすい施設を目指し運用してまいります。
 令和2年度は、2年に一度の後期高齢者医療保険料の見直しを行う年です。高齢者の医療費の増加などを考慮して所得割率が0.22%、均等割額が1,700円引き上げられる見通しですが、負担軽減の拡大も同時に行われますので、市民の皆様のご理解をいただきたいと存じます。
 一市二町で取り組む し尿等共同処理事業につきましては、本市の議員の皆様、湯河原、真鶴両町の議員の皆様との協働の結果、いよいよ令和2年4月から事業が開始できるところまでまいりました。改めて議員各位のご尽力に感謝申し上げるとともに、2町との連絡を密にして適切な運営を心がけてまいります。
 オーストラリアの森林火災が大きな被害をもたらしております。この要因として気候変動が挙げられており、これが及ぼす影響は、我が国にとっても不可避です。SDGs(持続可能な開発目標)が叫ばれる中で、自治体の取組み姿勢が問われております。本市の環境問題への取組み姿勢を示す第三次熱海市環境基本計画を改定し、環境リスクの低減に寄与できる施策を計画し実行してまいります。
 防災・危機管理につきましては、大規模自然災害等に備え、あらゆるリスクを見据えつつ、どんな事が起ころうとも最悪な事態に陥る事が避けられるような「強靭」な行政機能や地域社会、地域経済を事前につくりあげることを目的として、国土強靭化地域計画を策定いたします。
 また、老朽化した同報系防災行政無線子局の更新整備を行い、情報伝達の強化に努めてまいります。

(3)観光経済部門

 次に、観光経済部門についてです。
 観光振興につきましては、引き続き、観光ブランド・プロモーションに取り組むとともに、熱海型DMOとなる観光地域づくり法人の構築の動きと連動して、改めて、地域資源の掘り起こし、プロモーションの方針について検討・実施していきます。検討にあたっては、ICTを活用した調査など定性・定量的かつ客観的なデータをもとに取り組んでまいります。
 また、別荘所有者の来訪促進を目指し取り組んでいる「熱海型別荘コンシェルジュ」事業につきましては、事業効果を測定するとともに、実効性の高い取組みとなるよう不断の見直しをしてまいります。
 メディア・プロモーション事業につきましては、市民の皆様のご協力を得ながら、効果的なメディア露出を目指すとともに、より効果の高いメディア・プロモーションの方策について検討してまいります。
 産業振興につきましては、創業支援事業とともに、国の地方創生推進交付金を活用し、静岡県と連携しつつ、東京圏からのUIJターンの促進と地方の担い手不足対策に取り組みます。また、魅力ある買い物環境づくりを支援するため、商店街が取り組むアーケード改修などを支援するとともに、本年10周年を迎える熱海ブランド事業(A-PLUS)に協力してまいります。
 農林水産振興につきましては、本市だけでなく全国的に問題となっております有害鳥獣への対応、被害防止に引き続き取り組むとともに、農地の集積や適切な農道整備、環境保全型農業の支援により、農業基盤の整備を進めてまいります。また、水産物供給基盤機能保全事業として初島における臨港道路の整備や、養殖漁業に対する支援により漁業基盤の整備を進めます。
 平成28年度から取り組んでいる自伐型林業につきましては、林業研修受講者らによる団体の活動が動き出しておりますので、引き続き必要な支援を行います。また、林道の適切な整備や森林管理方法の検討を進めてまいります。
 東京2020オリンピック・パラリンピックにかかるホストタウンとして、ブルネイ・ダルサラーム国の受入れを検討するとともに、大会後の経済的な交流の実現に向けて取り組んでまいります。

(4)建設部門

 次に、建設部門についてです。
 急速に進む人口減少・少子高齢化を見据えたコンパクトシティの形成を目指すため、「立地適正化計画」の策定作業を進めるとともに、将来都市構造に合わせ、都市計画施設等の必要性を再検証してまいります。
 市営住宅につきましては、立地適正化計画を見据えた市営住宅の役割、集約化、効率的な維持管理手法を検討するとともに、長寿命化のための修繕計画の見直しを進めてまいります。また、民間事業者による管理を推進するとともに、包括的な管理手法を検討してまいります。
 空き家対策につきましては、利活用を推進するため民間事業者と連携し、情報交換を進めてまいります。
 建築物等の耐震化につきましては、引き続き、関係団体等と連携しつつ、積極的に各種施策を展開してまいります。また、ブロック塀につきましては、令和3年度までの間、撤去や造り替える費用の一部を補助する制度を大幅に拡充し、耐震化を促進してまいります。併せて、地震発生時における建物倒壊による道路閉塞を未然に防止するため、緊急輸送ルート沿道建築物の耐震化を促進してまいります。
 道路、橋梁などにつきましては、市民生活に身近な道路の利便性や安全性を高めるため、改良を積極的に進めていくとともに、令和元年度に見直した橋梁長寿命化修繕計画に基づき、工事を行ってまいります。
 公園等につきましては、梅園内の橋梁等について点検結果に基づき計画的な改修を実施していくことで来遊客の安全性の確保に努めるとともに、お宮緑地周辺のジャカランダや梅園のウメの開花状況をタイムリーに把握・発信できるよう、花木に関する台帳データ等の情報基盤の整備を継続実施していくことにより、花の名所の適正管理と訪れる方々の利便性の向上に取り組んでまいります。

(5) 健康・福祉部門

 次に、健康・福祉部門についてです。
 高齢者福祉につきましては、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、身寄りの無い高齢者を対象に、生前の元気なうちに「葬儀・埋葬」などの希望を登録し、その希望に沿って葬祭事業者とマッチングする「熱海市終活支援事業あんしん」や熱海版エンディングノートである「熱海だいだいノート」などの利用促進に努めてまいります。
 また、介護保険につきましては、ケアプラン点検などを通じた介護給付費の適正化を一層推進するとともに、介護事業所のサービスの質の確保や、地域に相応しい介護サービス提供体制の実現に努めてまいります。
 生活習慣病対策につきましては、令和元年度の子宮頸がんと乳がん検診に導入した「ナッジ理論に基づいた受診勧奨ハガキ」について新たに胃カメラ検診の未受診者に対しても導入してまいります。
 糖尿病対策につきましては、本年3月に策定予定の「(仮称)熱海市版慢性腎臓病(糖尿病性腎症)重症化予防プログラム」に基づく取組みにより、腎不全や人工透析への移行を防止してまいります。
 高齢者の保健事業につきましては、法律改正により介護予防との一体的取組みを進めていくことから、健診や医療機関の未受診者に対し、訪問などにより健康状況を把握し必要な支援に繋げていくとともに、健診受診者につきましては、新たな問診票と健診結果を活用し、フレイル対策を実施してまいります。
 子育て支援につきましては、児童へのさらにきめ細やかな取り組みが求められており、子ども・子育て支援を、質・量ともに充実させるとともに、教育・保育、地域の子育て支援の充実を図るため、令和2年度を始まりとする「熱海市子ども・子育て支援事業計画」第二期計画を進めてまいります。
 障がい福祉につきましては、障がい福祉サービス等の提供体制及び円滑な実施を確保するため、第六期障がい福祉計画及び第二期障がい児福祉計画の策定作業を進めてまいります。
 生活困窮者自立支援事業につきましては、令和3年3月策定予定の熱海市地域福祉計画の中でその内容を明記し、制度の狭間に陥りがちな生活困窮者を地域で包括的に支援してまいります。
 スポーツ振興につきましては、本年開催される東京2020オリンピック・パラリンピックのパラリンピック聖火リレーが本市で実施されますことから、こうした機会を通して、障がい者スポーツの理解促進の契機とするとともに、障がいのある人もない人も、共にスポーツができる機会を提供してまいります。

(6) 公営企業部門

 次に、公営企業部門についてです。
 公営企業三会計につきましては、ライフラインを担う事業として、効率的かつ安定的な事業運営に努め、安全・安心で豊かな市民生活の向上に寄与してまいります。
 水道事業につきましては、安定した給水・経営を継続するため、令和2年度より離島初島簡易水道事業を上水道事業に統合し、老朽化が進んでいる海底配水管の布設替工事を進めてまいります。また、災害や断水事故などの緊急時に備え、関係機関との連携を図ってまいります。
 県営駿豆水道につきましては、引き続き三島市、函南町とともに二市一町の足並みを揃えながら、今後を見据えた事業のあり方や料金につきまして、県企業局と協議を行ってまいります。
 下水道事業につきましては、ストックマネジメント計画に基づき、老朽化した浄水管理センター設備や管路の更新工事を進めるとともに、適切な維持管理を行ってまいります。
 温泉事業につきましては、源泉施設の整備や、老朽化した送配湯管等の更新を進め、効率的な運転管理と安定給湯に努めてまいります。

(7) 消防部門

 次に、消防部門についてです。
 熱海大火から70年の節目の年にあたり、市民の防火思想の高揚と消防に対する理解を深めるため、「熱海大火70年大会」の開催をはじめ、火災予防の広報活動に努めてまいります。
 火災予防対策につきましては、高齢者の安全確保を重点目標として、住宅用火災警報器の設置率の向上、維持管理の啓発に努めてまいります。
 また、防火対象物への予防査察を強化し、宿泊施設の安心情報を発信するとともに、違反是正の徹底を通じ、火災の未然防止に努めてまいります。
 救急体制につきましては、救急需要に的確に対応するため、救急業務の高度化に向け、救急救命士の育成に努めてまいります。
 消防力の要は人材です。若手職員の更なる知識、技術の向上のため、部内研修の充実を図り、外部派遣研修を積極的に行い、人材育成に努めてまいります。 
 今後とも、地域防災の要である消防団との連携強化を図り、常備、非常備消防が一体となり、地域の安全・安心の確保に努めてまいります。

(8) 教育・文化部門

 次に、教育・文化部門についてです。
 学校等施設の適正規模・適正配置により、令和3年度に計画している網代小学校と多賀小学校の統合につきましては、児童への配慮を最優先に進めてまいります。また、このことと並行して、網代の地域活性化とともに網代小学校の跡地利用、活用について、地元の方々との協議に基づき検討してまいります。
 新学習指導要領に基づく教育を着実に実施できるよう、教職員の多忙化の解消を行うため、外部から新たに部活動指導員2名を配置いたします。また、教職員の適正な健康管理を行うため、学校産業医を設置してまいります。
 特別支援教育につきましては、医療ケアの必要な児童に対し、保護者の負担軽減を目的に看護師による支援を行ってまいります。
 社会教育につきましては、市民の生涯学習活動がより充実したものとなるよう、学習機会の拡充に取り組むとともに、子育て支援の観点から家庭教育に対する支援にも努めてまいります。また、ここ数年の本市の外国人住民登録者数の増加傾向を踏まえ、多文化共生の観点から日本語教室等の質の向上を図ってまいります。
 重要文化財の旧日向別邸につきましては、将来にわたって公開・活用を図っていくため、令和3年9月末の完成を目指し、保存修理工事を進めてまいります。
 江戸城石垣石丁場跡につきましては、令和2年3月策定予定の保存活用計画に基づき、将来の整備基本計画策定に向けた取組みに着手してまいります。
 起雲閣につきましては、今後とも持続的に開設していけるよう、必要な修繕を実施するとともに、今後は修繕計画に基づき対応してまいります。
 (仮称)熱海文学館につきましては、杉本苑子先生のご遺志に添う文学館の開設を目指し、外部の専門家を交えた設立準備委員会を中心に、基本計画の策定に着手してまいります。
 市が所有する歴史・文化関係資料につきましては、状況把握と整理作業を進めるとともに、その保存・活用について検討を行ってまいります。
 図書館につきましては、サービスの充実や運営のあり方について図書館協議会で議論を継続するとともに、電子書籍など新システム導入による市民の図書館利用の増加や、学校との連携を深めて若年層の読書量の向上を図ってまいります。

4.むすびに

 元号が令和に変わる中で、熱海は新たな成長のモデルを創っていかなければなりません。
  熱海躍進の取組みを加速し、ビジョンを実現するためには、市民、産業界、議会、そして行政がそれぞれの役割と責任を果たしながら、協働していくことが不可欠であります。 
 議員各位、並びに市民の皆様におかれましては、特段のご理解とご協力をいただきますようお願い申し上げ、私の施政方針といたします。

令和2年2月25日

熱海市長  齊 藤  栄

 

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