平成30年9月市議会定例会齊藤市長所信表明演説
はじめに
今回の熱海市長選挙の結果は、齊藤市政三期12年に対する市民の皆様の評価の現れであると感じております。市民の大きな期待を受け、市長としてその責任の重さに、改めて身の引き締まる思いであります。
私が政治を志した原点は、「地方自治」にあります。海、山、温泉に恵まれ、首都圏に近接した熱海市を地域の力で蘇らせたい、そしてそこに住まう人々を幸せにしたい、その思いでこれまで12年間走り続けてきました。
今後とも初心を忘れず、熱海市の更なる発展に向け、全身全霊、市政に取り組んでまいります。
齊藤市政の三期12年
熱海市は今、「V字回復」したまちとして、全国から注目を集めるようになりました。平成23年に大きく落ち込んだ宿泊客数は、地域資源の磨き上げ、シティプロモーションなど、官民一体となった「オール熱海」での取り組みにより、その後堅調に推移し、平成27年から3年連続で年間300万人を超えることができました。
また、市長就任以来、長年の懸案であった公営企業会計の約41億円もの不良債務も、市民の皆様には多大なご負担をお掛けしましたが、平成28年度に全額解消することができました。
さらに、三期目の重要政策として取り組んだ「住まうまち熱海づくり」についても、教育・子育て、福祉、市民インフラの整備等の分野で着実に施策を展開してまいりました。
一方で残された課題も多く存在します。市民の皆様から、「熱海の経済が回復したと言っても、賑わいは熱海駅周辺に限られている」という声を聞きますし、働き世代、特に若年層の市外への人口流出に歯止めがかかっておりません。これらの課題に的確に対応するとともに、私は中長期の視点で熱海市が持続的に発展する仕組みを作っていく必要があると考えています。
熱海2030ビジョン
熱海は「回復」を遂げました。そしてこれから目指すものは本格的な熱海の発展、つまり「躍進」です。
今後とも熱海市の人口減少が続くことが予測されますが、その様な状況下であっても、経済の持続的発展と豊かな市民の暮らしを実現できる温泉観光地の全国モデルを、この熱海市から作ってまいります。そして、このことを実現するための政策が「熱海2030ビジョン」です。
2030年を目標にしているのは、今年小学校に入学した1年生が12年後にちょうど高校卒業を迎えますが、その時までに市内に希望する仕事があり、加えて安心して子育てできる環境がある、そのような彼ら彼女らが住みたい、暮らしたいと思える熱海市を用意したいという思いからであります。
2030年は中長期的な目標ですが、今後の4年間で、熱海が持続的に発展する仕組みの礎づくりを行ってまいります。
「熱海2030ビジョン」の具体的な内容は次のとおりです。
1. 観光・経済の活性化
1つ目の柱は「観光・経済の活性化」です。
現在、熱海の観光は回復を遂げつつありますが、今後更に、世界屈指の地域資源を活かし、観光地経営の視点での強力なシティプロモーション、観光インフラの整備等を行い、来遊客に癒しと感動を与える温泉観光地・熱海をつくってまいります。
市税収入は今後とも減少していくことが予想されます。このような中で、中長期的に観光財源を着実に確保していくため、熱海の魅力を高めるとともに、観光の振興を図るという特定の目的を持つ新たな財源の確保の方策、いわゆる宿泊税も新たな財源の候補の一つとして検討を進め、その実現を図ってまいります。
財源の確保とともに、官民による観光まちづくりを更に強力に推進するための仕組みづくりも重要です。そのため、観光地経営の視点に立った観光地域づくりの舵取り役としての熱海版DMOの設立を検討し、その実現を図ってまいります。
街並み及び観光インフラの整備は、観光地の魅力を高めるため、常に行っていく必要があります。地域資源の価値を重要視し、熱海の温泉、歴史、文化を活かしながらそれらの整備を推進してまいります。
商業・農林水産業につきましては、基幹産業である観光業との連携を強化しながら、その振興を図ってまいります。
別荘等所有者は、旅館・ホテル等の宿泊客とともに、熱海にとって重要な顧客です。別荘等所有者の来訪頻度を高め、地域経済の活性化につなげてまいります。
2. 教育・福祉の充実
2つ目の柱は、「教育・福祉の充実」です。
経済が活性化し、来遊客や宿泊客が増えたとしても、人口、特に働き世代の人口が減り続ければ、基礎自治体としての存続さえ危ぶまれます。
このため、市民の誰もが、長寿・健康・生活の豊かさを享受でき、手厚い子育て支援、充実した教育環境の整備などにより、市外へ出て行った子どもたちが戻ってきたいと思う熱海をつくってまいります。
就学前保育・教育につきましては、全入化を前提にその完全無償化に向け取り組んでまいります。
熱海で育つ子どもたちが熱海に対して誇りと愛情を持つことが、その後の熱海での生活を選択することや、人生を通じた熱海への関わりに繋がっていくと考えます。このことを実現するための公教育のあり方を検討します。
また、地元企業への就職を促すため、そのことを条件とした奨学金の創設に取り組んでまいります。
熱海市は心と体を癒す温泉観光地として、来遊者、市民をはじめ全ての人に優しいまちを目指しています。熱海に住まうご高齢の方、障がいをお持ちの方が、地域において安心して暮らせるまちづくりを進めてまいります。
熱海市民の健康水準は、残念ながら県下で低い位置にあります。市民の生活の質を向上させるため、健康寿命を伸ばす施策に力を入れてまいります。
3. 仕事・くらしの変革
3つ目の柱は、「仕事・くらしの変革」です。
人口減少、少子高齢化が進む社会において、今後、観光業の発展を支える人材の確保とともに、地域コミュニティの維持などは解決しなければならない大きな課題です。
観光業を支える人材を確保するには、誰もが働きたくなる温泉観光地・熱海を作っていかなければなりません。
このため、安定した雇用を創出し、生涯地元で働くことのできる職場環境、良好な住宅環境等を整備するとともに、若者からシニア世代まで、いつまでも働くことのできる熱海をつくってまいります。
また、熱海市における観光業の生産性や魅力の向上などに対して、行政が産業界と一体となって取り組んでまいります。
地域コミュニティについては、防災、見守りをはじめ、市民生活を支える基本単位として重要な役割を担ってきました。行政が町内会等と密接に連携して、地域コミュニティの存続と活性化を図ってまいります。
(仮称)熱海フォーラム整備事業については、「市民の集う場」としての整備を進めてまいります。
地球規模での気候変動などにより、自然災害の可能性が高まる中、災害に対する備えを更に強化していく必要があります。このため、地域の防災力を高めるとともに、観光と防災が両立した安全安心のまちづくりを進めてまいります。
健全な財政状況は、市政運営の重要な基盤です。行財政改革については、これまでと同様に不断に進めてまいります。
おわりに
これまでの三期12年、常に新しいことに挑戦し続けてきました。また、公共料金の値上げや学校の統廃合など、熱海市の将来にとって必要なことは決して逃げることなく取り組んでまいりました。そして今、ようやく熱海は「回復」の時期を越え、これから「躍進」を目指して進もうとしています。
私は常々、心に留めていることがあります。それは「改革は一夜にしてならず」という言葉です。遠いところにある目標やビジョンは、一足飛びに実現できるものではありません。目の前の課題を一つ一つ解決することでしか、目標やビジョンに近づくことはできないのです。
「熱海2030ビジョン」は非常に大きな、そして高い目標です。簡単に実現できるものではありません。
しかし、これまで12年間やってきたことと同じ様に、目の前の課題に一つ一つ真摯に取り組んでいけば、この目標は必ず実現できると信じています。
「回復」から「躍進」へ、この大きな目標に向け、行政、議会、産業界、そして市民の皆様の力を結集し、全力で取り組んでまいります。
市民の皆様、そして議員各位にご理解とご支援をよろしくお願い申し上げ、私の所信表明といたします。
平成30年9月28日
熱海市長 齊藤 栄
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