澤田政廣記念美術館の建物について
コンセプト
外観は大地に置かれた苔むした巨岩のごとく、内部は曲線で構成された胎内のごとく…。
深い緑の合間に、太古の昔から地中深く埋もれていた大きな岩の魂が突然地上に現れ、人間の奥深い所にある素朴な心に触れるのを待ち望んでいるかのような外観…。
日本を代表する建築家、村野藤吾氏が敦煌の石窟をイメージして設計した谷村美術館・澤田政廣作品展示館(昭和58年開館、新潟県糸魚川市)を参考にし、外観とともに、土の色を基調にした内部空間が、澤田政廣の代表的な彫刻群を優しくつつむように設計されました。
外観
モルタルのひびわれを配慮して、苔むした岩の表現をデザインしています。この施工法の開発に約1年を費やしました。コンクリート躯体には、立体網目不織布(ベースネット)を張り、ゼロスランプモルタルを吹き付け、そして乱数表にもとづく色付けをしました。この苔むした岩のような外観に、屋根材の銅版の緑青が流れ落ちることにより、年月とともに古色蒼然とした味わいを見せています。
館内
展示室の壁面も、ナイロンパイルを静電気で植毛させ、いかにも内壁一面に苔が生えたような感触をあたえました。この仕上げにより、光線の具合によって微妙にその表情が変化します。また、コンクリート植毛壁の接着剤にも工夫を凝らし、展示の木彫作品に悪影響のないようにされました。
伝統的な左官技術の見直し、外壁の擬岩仕上げ
塗る、積む、張るは、古代から人間の知恵と経験によって培われてきた建築の仕上げ工法です。その中でも、左官材料を構造躯体に塗りつける左官仕上げは、最も基本的なものといえます。この左官技術のよさを見直し、左官塗り仕上げをより発展させたところに、この美術館の意義があります。外壁の擬岩仕上げには、特にその良さが発揮されているといえるでしょう。この工法により、耐久性、芸術性が高まったとの評価を受けています。
- 敷地面積:3,210.96平米 (973.018坪)
- 建築面積
本館:572.00平米(1階434.25平米、2階137.75平米)
蔵品館:214.80平米
アトリエ:110.54平米 - 施設の概要
本館:鉄筋コンクリート造平屋建、一部2階建 一棟
蔵品館:鉄筋コンクリート造2階建 一棟
アトリエ:鉄骨造2階建 一棟 - 工期:昭和61年12月19日~昭和62年10月31日
- 設計:熱海市建設部建築住宅課
このページに関するお問い合わせ
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電話:0557-81-9211 ファクス:0557-85-4877
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